佼成カウンセラー有資格者全国大会 相談者とのかかわり方、寄り添い方を学ぶ

大会初日は、臨床心理士で明治学院大学名誉教授の井上氏が講演

『ほぐす ほどける つなぐ』をテーマに、佼成カウンセリング研究所による「佼成カウンセラー有資格者全国大会」が9月1、2の両日、法輪閣(東京・杉並区)で行われた。この大会は、カウンセリングの知識の習得や技能の向上を図ることが目的。同研究所が開講する「佼成カウンセラー養成講座」で学び、全日本カウンセリング協議会の認定資格を取得した佼成カウンセラーら273人が参加した。

佼成カウンセリング研究所は、仏教精神を基盤としたカウンセラーの育成を目的に1972年10月に設立された。翌月、全日本カウンセリング協議会に加盟。翌年からは、同協議会規定のカリキュラムに準じた「カウンセラー養成講座(第1期)」を開講、以来、約1500人の有資格者を輩出してきた。また、75年8月には、「佼成カウンセリング相談室」を開設。面談と電話を通して、市民の悩みの相談に応じている。同研究所は現在、養成講座や公開講座による「教育」、電話・面接による「相談」、より良いカウンセリングのあり方を探る「研究」の3分野を中心に活動を続けている。

全国大会初日の1日には、同研究所の稲毛田貴史所長、立正佼成会の中村記子習学部部長のあいさつに続き、臨床心理士で明治学院大学名誉教授の井上孝代氏が『多元的こころの時代に求められる心理支援力――マクロカウンセリングの視点から』をテーマに講演した。

対話の重要性を語る井上氏

井上氏は、カウンセリングの際に、カウンセラーが自らの先入観や価値観に基づいて相談者の話に耳を傾けると、命令や説得を強いる一方的なコミュニケーションになりがちであると指摘。一人ひとりの価値観が多様化し、人生の将来設計や生活様式が多岐にわたる現代では、これまで以上に、相互理解に基づく対話を通じて問題の解決を図ることがカウンセラーに求められると述べた。

また、対立やもめ事を解決する手法として、ノルウェーの社会学者であるヨハン・ガルトゥング氏が考案した「トランセンド法」を紹介した。この方法は、対立する者同士が妥協点を見つけたり、綱引きのように利害を調整したりするのではなく、対話によって双方の本音や願いを引き出し、共通の利益を見いだして解決策を探ることが特徴。この手法には、問題そのものの解決に加え、対話によって当事者同士の相互理解が深まる点に有用性があると示した。その上で、「カウンセラーとして、相談に耳を傾けることはもちろん、目の前の相手が抱える問題を現実的な解決へと導くような存在になって頂きたい」と参加者に期待を寄せた。

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