軍隊を持たないコスタリカ その軌跡を追った映画の監督が来日

マシュー・エディー氏

米国の社会学者であるエディー氏は、70年前に軍隊を撤廃し、現在も平和な民主国家として歩むコスタリカに関心を持った経緯を紹介した。また、社会学者として現地の大学生の意識を調査した結果に触れ、91%の学生が軍隊の撤廃を評価していると報告。コスタリカは、国際社会や国際機関と信頼関係を深めることによって国を守る「国家安全モデル」を構築しているとし、紛争のない世界にするには、こうした外交方針が今、各国に求められているとの見解を示した。

一方、米国の市民の多くは、軍事力に頼る自国のあり方に疑問を抱いているとも発言。社会学には、「社会の不平等こそが最も平和を脅かす」との研究成果があり、軍事予算を費やすほど貧富の格差や社会的不平等が加速度的に広がって、貧しい人から先に生活のあらゆるものが奪われていく(生活が脅かされていく)と警鐘を鳴らした。その上で、社会をより良くしていくには、「われわれ市民が社会的不平等を意識し、現状を変えるための抵抗をすべき」と述べ、市民が声を上げる重要性を訴えた。

マイケル・ドレリング氏

ドレリング氏は冒頭、戦争などの軍事行為によって1億人が犠牲になった20世紀は、「人類史上最も破壊的で非人道的な世紀」と発言。映画の制作経緯に関しては、多文化の共存という平和のためにコスタリカ人が行ってきた努力について学びたかったと述懐するとともに、「資源がない国でも、軍がなくても、平和に暮らせる幸せな人々がたくさんいる事実を知ってほしい」と語った。

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