平時のつながりが生み出す支援 熊本地震と向き合う宗教者がシンポジウムで議論

糸山・真宗大谷派熊本教区光照寺副住職

行政には持ち得ない住民とのつながりが、そのまま支援に役立つケースもある。災害時、避難命令に応じない人も多い。糸山公照・真宗大谷派熊本教区光照寺副住職は、民生委員からの要請を受けて檀家(だんか)を訪れ、懇切に説いて避難所まで誘導した。現在も仮設住宅に移った檀家の人たちへの訪問を続けている。

「行政機関が行う各家庭への見回りはあくまで業務時間内でのことで、日中に仕事や畑に出ている被災者には会えないし、状況も把握しきれない。住民と行政、さらには支援者をつなぐことが必要であり、宗教者はその要、キーパーソンになり得ます」と強調した。

力久道臣・善隣教教主は、宗教団体が連携して支援活動に当たる大切さを述べた。世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会と新日本宗教青年会連盟(新宗連青年会)で組織される「熊本地震復興支援ボランティア」(VOWS)の取り組みを紹介。VOWSでは、WCRP/RfP日本委や新宗連青年会のスタッフを自治体のボランティアセンターに派遣し、被災者やボランティアへの対応を支援した。一人の宗教者にできることは限られるが、連携することでさまざまな支援が可能になることが強調された。

力久・善隣教教主

このほか、当日は、12人の寝たきりの住人が地震発生から40分以内に救出された宇城市の例も挙げられ、地域のコミュニティーの重要性、普段からのつながりの大切さが再確認された。宗教者と地域の人たち、宗教者と自治体、宗教者同士の連帯の強化をいかに図っていくか――今後のポイントも示されるシンポジウムとなった。