平時のつながりが生み出す支援 熊本地震と向き合う宗教者がシンポジウムで議論

宗教者の役割とはーー。4人の宗教者が熊本地震における自らの支援活動を発表

『熊本地震と宗教者――それぞれのむき合い方』と題する宗教者災害支援連絡会主催(上智大学グリーフケア研究所共催)のシンポジウムが5月2日、東京・千代田区の上智大学四谷キャンパスで開催された。宗教者ら約70人が参加した。当日の報告と議論を基に、災害に直面した時、宗教者に求められる姿勢について紹介する。

立野・日本福音ルーテル大江教会牧師

熊本地震は平成28年4月14日(本震は16日未明)に発生した。熊本・大分の両県で相次いで発生した地震による死者数は、災害関連死を含め260人を超える。震災から2年が経過した現在も、約3万8000人が仮設住宅などでの避難生活を強いられている。ボランティアによる支援の減少、建設業界の人手不足が住宅再建を滞らせていることなど復興に向けた課題は多い。シンポジウムでは、自身も被災しながら支援活動を行ってきた4人の宗教者が自らの体験を報告し、宗教者に求められる取り組みについて話し合った。

東日本大震災の時も支援活動を行った日本福音ルーテル大江教会の立野泰博牧師は、熊本地震の被災者は地震から2年が経過した今も“不安”を抱えながら生活していると指摘。度重なる地震を経験したことで、現在でも家屋の倒壊を恐れてビニールハウスや車中で寝起きしている被災者もいると話した。さらに、被災者が抱える不安が自立や生活再建への意欲をそぎ、諦めさせる要因にもなっているとし、不安を抱える人たちに寄り添う宗教者の必要性を訴えた。「被災者が話す一言一言に、不安や苦しみが隠れています。それを感じ取るためには日頃からの付き合いが大切になってきます。教会を地域に開放するなど、住民との親しい関係を宗教者側が意識してつくる必要がある」と述べた。

矢野・金光教木山教会在籍教師

「気を張っているのは、被災者だけではありません」。そう語り出したのは金光教木山教会在籍教師の矢野道代さんだ。震災当時、被災地では、支援の受け入れ態勢が整わないためにボランティア活動を開始できない団体があった。矢野さんは木山教会内に「第2キッチン」と名づけたカフェをつくり、支援者らが立ち寄れる場とした。この「キッチン」が報道関係者やボランティア団体の情報交換の場に発展、刻々と変化する状況にも的確に対応した支援につながった。

「支援者を支えることが結果的に被災者のためになりました。宗教施設は、祈りの場であると同時に、自治体とはひと味違った支援の場になる可能性を秘めていることに気づきました」と矢野さんは話した。

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