景観との調和を考え、木と共に生きる未来を 日宗連が宗教文化セミナー
日本宗教連盟(日宗連)による第6回宗教文化セミナー「美しき日本の残像――古民家の再生と日本再生」が3月30日、東京・港区の神道大教院で行われた。日宗連に協賛する5団体(教派神道連合会、日本キリスト教連合会、全日本仏教会、神社本庁、新日本宗教団体連合会)の関係者、市民ら62人が参加した。当日は、古民家の再生・活用を通じ、美しい風景と文化の保全を進めるNPO法人「篪庵(ちいおり)トラスト」理事長で東洋文化研究者のアレックス・カー氏が講演に立った。
カー氏は、人口減少も重なり、地方の過疎が進む一方、訪日外国人観光客は右肩上がりに増加していると説明。その要因には、日本独自の美しい自然、荘厳な寺社仏閣に外国人観光客の心がひきつけられているからだと語った。一方、高度経済成長期以降、コンクリートむき出しの治水施設や山の斜面に乱立する送電線用の鉄塔が築かれるなど、効率と利便性を優先した公共事業が日本の各地で進められた結果、景観が損なわれ、日本の自然美といった魅力を手放していると指摘した。その上で、同氏が古民家を再生する際、古来の間取りや建材の風合いなどを生かしつつ床暖房やIH調理器などを導入することで、日本建築の美しさと現代的な暮らしの利便性とが調和するよう心がけていると詳述。さらに、景観に調和した観光開発の海外の実例として、電線の地中化や、山林で木を模して作られた携帯電話の基地局などを紹介した。
【次ページ:カー氏と日宗連理事の田中恆清神社本庁総長(石清水八幡宮宮司)による対談】