早大大学院の長谷部教授を講師に人権学習会

緊急事態条項の新設については、2012年に出された「自民党憲法改正草案」を基に説明。首相が必要と判断した場合は、閣議決定のみで緊急事態を宣言することが可能で、その期間中は、「法律と同一の効力を有する政令」を内閣が制定できることに触れ、国会の審議や承認を経ないことの問題点を挙げた。その上で、日中戦争中の1938年に、人的・物質的資源の統制運用の全権を政府に委ねることを可能とした「国家総動員法」が制定された事例を紹介。強大な権力を政権に集中させた歴史を踏まえ、政府の恣意(しい)的な運用によって不当な逮捕や身柄の拘束が行われる可能性を否定できず、日本国憲法18、31条の定める「人身の自由」が侵されかねないとし、緊急事態条項は「極めて危険な条項」と警鐘を鳴らした。

このほか、「参議院の合区解消」「教育の充実強化」の2項目については、法整備によって即実現できるとし、あえて憲法に定める必要はないと語った。

この後、質疑応答が行われ、「憲法9条に対して、新たな条文を加える方向で論議がなされているが、追加されると条文自体の内容に変化が生じるのか」といった質問が上がった。これについて、長谷部氏は、法律は新しくできたものが優越するとし、それが法学の一般原則と説明。憲法も同じで、そのため、9条については、「新たな条文の内容によってはそれが優先され、現9条の1項、2項が残ったとしても、完全に『死文化』してしまう可能性がある」と述べた。

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