第16回庭野平和賞受賞の聖エジディオ共同体 創設50周年記念のミサ 「世界に壁を築いてはならない」と呼び掛け

近年は、イタリア政府、同国のプロテスタント諸教会と協力し、難民資格のある人々を各地で支援すると同時に、国内での受け入れ先を事前に準備する「人道通路」と呼ばれるイニシアチブを実行している。同共同体が主導するこの運動の展開に、フランスやベルギー、ドイツの各政府が関心を示し、取り入れようとしている。

最新の設備が導入されている聖エジディオ共同体の保健センター

アフリカでの平和への取り組みは世界から注目を集める。エイズ患者やHIV(エイズウイルス)陽性者の治療機関を設け、戸籍がないためにゲリラ兵への徴用や臓器提供、児童労働、性的搾取の危険にさらされる子供たちを守るため、戸籍の登記活動を積極的に展開。モザンビークや中央アフリカでの調停に挑み、和平合意を成立させたほか、現在でも南スーダン、リビア、イラクで和平実現に向けた調停活動に尽力している。こうした活動から、同共同体は「下町トラステベレの国連」「下町の民間外交」などの異名を持つ。

さらに、1986年に教皇ヨハネ・パウロ二世の呼び掛けでイタリア・アッシジで行われた「世界平和祈願の日」の精神を継承し、翌年から毎年、「世界宗教者平和のための祈りの集い」を欧州各地で主催している。創設者のリカルディ氏は、創設50周年に際し、「創設当時に比べ、世界はグローバル化したが、それと同時に、テロや移民・難民といった問題が出現してきた。だが、聖エジディオは、恐れてはならない、壁を築いてはならないと呼び掛け続ける」と述べた。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)