「NGO非戦ネット」がトークイベント 『国境を越え世代を受け継ぐNGО』テーマに

日本と世界のつながりを考える

各人の活動地と日本の接点に話題が及ぶと、東ティモールで地域開発に取り組む野川氏は、2002年に独立した同国の歴史に言及。独立までの25年間に人口の3分の1にあたる20万人が犠牲になったが、当時、同国を軍事占領していたインドネシア政府に日本が経済支援しており、紛争を通して見える世界と日本の関係について、多くの人と考えていきたいと語った。

また、谷山氏は、長年の海外経験を踏まえ、日本では実感しにくいものの、日本と世界の人々は経済を中心に密接に結びついており、他国の貧しい人々の暮らしとも実は関係していると詳述。世界の人々に対して、「分断を生む関係ではなく、結合を生む良い関係にどう変えていけるかが私たちの課題。平和をつくるには、関係性の実態を深く理解することが大事」と発言した。その上で、日本が自国への食糧輸入につなげるため、現在モザンビークで計画している大規模農業開発事業が、現地の人々の声を無視した形で進められ、分断を生んでいると説明。共生に向けた対話の重要性を強調した。

フォトジャーナリストの安田氏

この後、JVC理事の金敬黙氏をファシリテーターに、同書執筆者によるリレートークが行われた。聖心女子大学の大橋正明教授は、平和憲法が制定された当時の、武器を持たず、戦争をしないという理想主義のリアリティーが時間の経過とともに風化し、昨今は、他国の脅威に武力で対抗しようとする風潮が生まれていると説明。しかし、武力による対抗は、結局強い者が正義となり、「僕らの未来はなくなってしまう」として、「(戦争をしないという)理想主義しか現実を開かない」と力説した。

このほか、日本の市民運動は海外と比べ、社会を変革する大きなうねりとなりにくい状況があるとの会場からの質問に対し、安田氏が応答。日本社会には、専門家以外の人が発言することに対して、「タブー視する空気感がある」と指摘し、「政治的ではないものはむしろ私たちの日常の中にはありません。それを身近なこととしてどう引き寄せられるのか考えるべき」と投げ掛けた。

NGOに携わる8人が登壇したリレートーク