TKWO――音楽とともにある人生♪ テナートロンボーン・石村源海さん Vol.2
コロナ禍が演奏家としての幸せを実感する機会に
――昨年の4月に正式に入団し、1年が経ちますが、入団から今日までを振り返って、どんな思いがありますか
1年が経ったという実感はありません。昨年は新型コロナウイルスの影響で、3月から9月まで演奏会がなく、正式な楽団員として初めて舞台に上がったのが10月の定期演奏会でしたから。それでも、僕の入団した昨年がちょうど楽団創立60周年というアニバーサリーイヤーだったので、さまざまな所に行くことができました。多くの方にお会いできたのも、うれしかったです。
それだけでも貴重な体験でしたが、コロナ禍によって音楽について、いま一度深く考えさせられ、演奏家としての幸せを実感することもできました。昨年から今年にかけて、感染状況によって、いくつも演奏会が中止になりました。演奏会が再開し、楽団員で集まって、リハーサルに臨むたびに、皆が奏でる音から、「演奏をしたかった」という強い思いが伝わってくるのです。舞台に上がれる喜び、早くお客さんの前に立ちたいという思いがあふれていました。ここにいるメンバーは心の底から音楽が好きで、佼成ウインドの音はこういう熱い思いの人たちが集まってつくっているのだ――そんな先輩たちと一緒に演奏ができることに、とても幸せを感じたのです。
お客さんの拍手にも、ものすごく熱を感じました。演奏会の再開を待っていてくださった皆さんの「ずっと楽しみにしていた演奏をやっと聴けた」という思いが、拍手を通じて伝わってくるんです。自分がプロになって、より実感するのですが、客席の反応は、舞台上の私たち奏者に良くも悪くもダイレクトに伝わってきます。お客さんが待っていてくださった、僕らの演奏をこんなにも求めてくださっていることに喜びを感じ、皆さんの期待に応えられるように、もっと頑張ろうと誓いました。
プロフィル
いしむら・よしひろ 1997年、東京・中野区生まれ。2015年、第22回日本トロンボーンコンペティション独奏部門高校生以下の部で第1位となる。20年に東京藝術大学を卒業し、東京佼成ウインドオーケストラに入団。