常にヒットを打てる準備を

――Ｂ♭管のクラリネット演奏者によっては、良くないリードに吹き方を合わせてしまうので、最初のうちに選別して捨ててしまう方もいるそうですが、選別せずに育てるのはバスクラリネットならではでしょうか

そうですね。バスクラリネットのリードはＢ♭管のリードより二回りぐらい大きいので、全く同じ育成の仕方、考え方が当てはまりません。大きい分、バスクラリネットのリードは未知の可能性を秘めている場合もあるのです。

リードは、生きもののように変化していくものなので、くせ者です。皆、日々、試行錯誤をしてリードを育てているので、奏者によって育成の仕方はさまざまです。私は自分が尊敬するバスクラリネット奏者たちのリードを観察して、研究を重ね、やっと今の方法にたどり着きました。

そうして、長い目で育てて、平均値を上げるのが、私のこだわりポイントになりました。例えば、イチロー選手がいつもホームランは打てないけれど、常にヒットを打てる準備はしているという話を聞いて、「私もこれ！」って思いました。いつも１００％の状態を保つのは難しいですが、絶対に８５％よりは落とさないようにと考え、たどり着いたのが先ほどの育成の方法です。

プロフィル

ありま・りえ　１９７５年、奈良市生まれ。京都市芸術大学を首席で卒業、東京藝術大学大学院修了。第６８回日本音楽コンクールクラリネット部門入選、第１８回日本管打楽器コンクールクラリネット部門入賞。２００７年に東京佼成ウインドオーケストラに入団した。現在、洗足学園大学非常勤講師。