命が喜ぶ生き方を 『命の授業』講演家・腰塚勇人氏
一人で頑張らなくていい、助けてと言っていい
でも、敵がいました。夢ややる気をぶち壊し、心や体を傷つける、「ドリー夢キラー」です。私の内側にいたドリー夢キラーが言いました。「首から下が動かないなら、生きている意味がない。おまえの人生はもう終わった。家族の荷物。役立たず。ダメ人間」と。私の中のドリー夢キラーが私を殺そうとしました。
その時、私を救ってくれたのが、「ほっとマン」になってくれた当直の看護師さんです。その方が、「一人で頑張らないで。今は助けてと言っていい時ですよ」と声を掛けてくれたのです。
このケガをするまで、「助けて」と言うことがとても苦手な人間でした。なぜなら、この言葉は弱い人間や努力の足りない人間が言う言葉だと思っていたからです。プライドが邪魔をし、これ以上家族に迷惑をかけたくないという気持ちから、助けてと言えませんでした。
看護師さんが病室を出た途端、涙があふれ出てきました。〈本当は死にたいなんて思っていない。よくなりたいと思っている自分がいる〉。でも手足が動かず、何もできなかったのです。
泣くだけ泣いて朝を迎え、良くなりたい自分がいることに気づいて、病室の花が目に留まった時、決めたんです。今は「助けて」と言おう。周りの方の力を借りよう。そして花は動けないけれど、与えられた場所で一生懸命に咲いています。自分は顔しか動かないけれど、笑顔でいること、「ありがとう」と言うことはできる――今できることで、応援される生き方をしようと決めました。
4月、学校に戻ることができないと思っていた私に、中学3年生の担任という夢を与えてもらえました。学年主任の先生に理由を聞くと、「クラスがあったら、リハビリ頑張るでしょう? 卒業式に出るだけでもいい。担任をやりなさい。あなたが戻るまで私があなたのクラスを守るから」と言ってくれました。世の中にこんなリスクテイカー(つらい時、最後まで見放さず共に頑張ってくれる人)の大人がいるのか……と思いました。以来、学校へ戻ることが夢となり、信じて待っていてくれる先生、クラスの子供たちのおかげで、自分の中のドリー夢キラーと闘いながらリハビリを頑張ることができました。