好きなことを人生のパワーに 可能性を奪わない社会づくりが僕の夢 株式会社植松電機代表取締役・植松努氏

僕は今、北海道で会社をつくり、ロケット製作や宇宙開発などの事業を行っています。中学や高校の時の成績は悪かったのですが、母に将来の夢として、大好きなロケットを作りたいと話した時、無理だとも、頑張れとも言われずに、「思うは招くだよ」という言葉をかけられました。これが後押しとなり、大好きなことのための勉強を頑張れば、夢は形になると考えるようになりました。大好きなことこそ人生のパワーになる。夢があればなんでもできます。

思い描く夢は、世界を平和にしたいとか、人の笑顔が見たいといった漠然としたもので大丈夫です。例えば、人の命を助けたいのなら、医師だけでなく、医療機器や救急車を作ったり、整備したりする人も命を助けています。医師などの職業は手段であり、その向こう側にある「人の命を助けたい」が夢だと気づくと、選択肢が増えます。そして、出会う人々に自分の夢を話していくと、不思議と同じ夢を実現したことがある人に出会えて、その方法を教えてもらえます。僕自身、工作が得意でもロケットに関する知識がなかった。でも諦めなかったから、その知識を持つ北海道大学大学院の永田晴紀教授に出会えて、ロケット開発の事業を推進できました。

夢の実現には失敗も付き物ですが、たいていの人は失敗しない言い訳として、「どうせ無理」と言って何もやらず、その結果、自信をなくしてしまいます。不安から、自分より弱い存在を見つけて安心感を得ようとしていじめが生まれ、それが社会に連鎖し、最も弱い立場にある子供への虐待につながります。だから僕は、子供が無限の可能性に気づき、自信を持ってもらおうと、自ら小型ロケットを工作し、発射する体験プログラムを全国で行っています。人の自信と可能性が奪われない社会をつくりたい。それが今の僕の夢です。

日本は今、人口が減り続け、物が売れなくなっています。AI(人工知能)の登場で仕事もなくなるかもしれません。でも、世の中の不便や困難を自分の大好きな夢と結び付けてどう解決するかと考えたら、そこから新しい仕事が生まれます。

教育現場や家庭などで子供が夢を見つけた時、「どうせ無理」とは言わないで、「だったらこうしてみたら?」というアドバイスと共に、人脈の限りを尽くし、夢を実現した人を探して会わせてあげてください。関連する書物を一緒に探しても良いです。そうすれば、子供は夢を諦めずに済むのです。未来の社会を築いてくれる子供たちと一緒に、ぜひとも夢に近づいてほしいと思います。

(2月5日に開催された「全国教育者習学の集い」から)

プロフィル

うえまつ・つとむ 1966年、北海道生まれ。小さい頃から紙飛行機が大好きで、大学で流体力学を専攻。名古屋の航空宇宙産業で働いた後、北海道に戻り、株式会社植松電機を起業した。現在、さまざまな宇宙開発に関わりながら、全国の大学生や研究者を技術的にサポートするほか、人の自信と可能性が奪われない社会を目指して、全国の学校で講演やロケット教室も行う。著書は、『不安な時代に踏み出すための「だったらこうしてみたら?」』(PHP研究所)など多数。

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