食育――頭と身体にいい話 順天堂大学医学部助教・李玉棟氏

私たちは忙しい生活を送るあまり、食事をしていても、「その味を知らず」ということがないでしょうか。スマホを見ながら食事をすれば、当然、その味は分かりません。

心(脳)と腸は関連し合っているので、「心ここにあらず」で食事をしてしまうと、腸内細菌のバランスが乱れ、消化吸収の働きを低下させてしまうと私は考えます。食事中は、できるだけ静かに、食べることに集中しながら、心を穏やかにすることが大切です。

最後に、日本人の食文化の中でも伝統的な朝食の定番とも言える「みそ汁とご飯」についてお話しします。

みその原料である大豆と、白米との組み合わせは、実は理想的な栄養バランスと言えます。ご飯には「リジン」という物質が欠けているのですが、大豆製品には「リジン」が豊富に含まれているので、一緒に食べることで栄養素を補えます。栄養学的にも大変に良い組み合わせであるのです。

自分は何をどのように食べるのか。それを先人の知恵に学ぶことで、食への意識も高まります。また、自分の心や体を見つめ直すきっかけにもなり、よりよく生きるための食とはどういうものかも見えてきます。

皆さんもどうか、食についてさまざまな観点で導き出してみてください。いろいろな発見があると思います。

(6月16日、佼成学園中学校・高等学校で行われた保護者対象の特別講演会から)

プロフィル

り・ぎょくとう 1966年、中国河北省邯鄲市生まれ。医学博士。北京中医薬大学卒業後、外科医として中国国内で多数の臨床を重ねる。その後、来日し、順天堂大学医学部大学院を卒業。東京女子医大国際統合医科学研究科所などを経て、現在は順天堂大学医学部に所属。東洋や西洋の医学の枠にこだわらず、健康と疾患の本質を考えて、難病の対応法や養生法を多方面から研究している。