気候変動に挑む世界の取り組み 「気候ネットワーク」東京事務所長・桃井貴子氏
対策に乗り出す国際社会
世界では、気候変動による問題は、人類にとっての最大のリスクだという受けとめがさまざまなステークホルダー(利害関係者)の間で広がっており、科学者や市民社会のみならず、学識者、宗教団体、ビジネスの世界にも浸透してきました。そして、人類の生存を脅かす気候変動のリスクを回避するために、2016年に「パリ協定」が発効されたのです。これは、世界196カ国とほぼ全ての国が参加し、かつ法的拘束力のある協定です。パリ協定に示された目標は、「産業革命前に比べて気温の上昇を2度未満、できれば1.5度に抑えるよう努力すること」「温室効果ガスの排出量を今世紀後半には実質的にゼロにすること」などです。
欧州諸国を中心に、温室効果ガスの削減目標を高く設定し、排出量取引制度や炭素税といった「カーボンプライシング」を導入したり、再生可能エネルギーへの転換を進めるために、高い目標設定をして固定価格買取制度などの仕組みを早くから導入したりする国もあります。
企業では「RE100」というイニシアチブへの参加企業が増えてきました。REとは「リニューアブルエナジー(再生可能エネルギー)」の頭文字を取ったもので、将来的に電源を「再生可能エネルギー100%」に切り替えて生産活動を展開することを宣言する取り組みです。現在、世界で119社の企業(2018年1月時点)が賛同しています。最初は欧米のグローバル企業が中心でしたが、昨年からは日本の企業も参加を表明し始めています。
再生可能エネルギーへの投資が増える一方、化石燃料の使用に関わる企業などから投融資を引き揚げる「ダイベストメント(投資撤退)」運動も進んでいます。世界の大企業やノルウェーの政府年金基金などもこの活動に参加し、引き揚げられた資産は総額650兆円に上ります。この運動では宗教団体、慈善団体を筆頭に、政府や教育機関も大きく貢献しています。
とりわけ化石燃料の中でも、石炭のCO2排出量は天然ガスの2倍もあるため、石炭からの脱却が進んでいます。フランスは23年までに、イギリスは26年までに、カナダは30年までに石炭火力発電所を廃止すると宣言し、17年にはこれらの国が中心になって「脱石炭に向けたグローバル連盟」が発足するなど、石炭からの脱却が世界の潮流になってきました。