全ての子がスペシャル 一人ひとりに目を向ける「特別支援教育」の理念を今こそ 関西国際大学教育学部教授・中尾繁樹氏

“特別”ではない特別支援教育

話は変わりますが、山形県のI中学校の野球部が、昨年の夏、県の大会で優勝しました。大会前に、I中学校のある町から招かれた私は、子供たちは、どうしたらうまくできるのかを見極め、「こういうトレーニングをやったらうまくなるよ」というアドバイスを監督さんにしました。その後、監督の適切な指導のもとで、大会では打って、走って、町の小さな中学校が優勝したのです。

運動選手を指導する際、生徒自身が自分の体の状態に気づいてもらうように、僕は生徒の体のバランスを見て、改善点をアドバイスします。この指導のもととなっているのは、障害のある子や、赤ちゃんの成長過程からの学びです。

僕の元々の専門は、脳性まひや肢体不自由の子供たちと関わることで、40年近く触れてきました。運動・動作の指導をしていた経験が、姿勢や体の軸のゆがみの矯正、正しい体の使い方を教える選手指導に役立つのです。現在、世界で活躍する有名アスリートの指導も行っていますが、そこでも役立っています。だから、特別支援教育は、決して、特別な教育ではありません。

ただ、やはり、私たちはすぐに、「○○障害」と決めつけて考えてしまいがちですが、障害にばかり目を向けるというよりも、何度も言うように、子供の実態をしっかり見ましょうということです。つまりは、特別支援教育を行うのです。これまでの教育は、子供たちを全て同じものにしようとしてきました。でもね、服のサイズと一緒で、全員に「Mサイズの服を着ろ」と言ったら、どうなりますか? 服にはSSから4Lとさまざまなサイズがあるように、特別支援教育というのは、人それぞれに合わせた教育をしましょう、というものなのです。

【次ページ:特別支援教育が普及・定着すれば、いじめと不登校はなくなる】