全ての子がスペシャル 一人ひとりに目を向ける「特別支援教育」の理念を今こそ 関西国際大学教育学部教授・中尾繁樹氏

特別支援教育が普及・定着すれば、いじめと不登校はなくなる

学校教育法が改正された時、特別支援教育が普及・定着したら、いじめと不登校が未然に防げます、と伝達講習会で伝えられました。しかし、いじめと不登校は減っていますか? 特別支援教育が始まって10年以上が経ちますが、減っていると感じている方もあまりいないようです。ということは、特別支援教育が定着せず、「障害児教育」のままということです。「障害」にばかり着目して、これまで一般的に言われてきた対応をするのではなく、子供の実態を見ることが大切で、それによってその子の成長に悪い影響を及ぼすことを防げる教育でもあるのです。

アスリートの指導をする時、僕は「頑張らんでいい」と言います。もう頑張っていますから。でも、あんまり楽なことばかりすると試合に勝てなくなるので、練習の手順や量をどうしたらいいのかを伝えます。

これがコーチングです。教師も実は一緒で、ティーチングだけでなく、コーチングも行う。その両方の力が必要なのです。ティーチャーですから、教えようとするんですが、必ず、その人に寄り添ったコーチングが欠かせません。教師は、子供一人ひとりに合わせた寄り添いを心がけてください。

(1月21日、大阪普門館で行われた「全国教育者研究集会」の講演会から)

プロフィル

なかお・しげき 大阪教育大学教育学部卒業。神戸市の小学校教諭を18年間、同市教育委員会の指導主事を9年間務め、2008年から関西国際大学教育学部教育福祉学科教授。大学では、豊富な現場経験を生かして学生を指導する一方、特別支援教育の専門家として全国を飛び回り、公開講座の講師や自治体の専門チームの相談員として現役教師の指導、育成に当たる。著書にシリーズ『特別ではない特別支援教育』(明治図書)、共著『特別支援教育の理論と実践』(金剛出版)など。