誰も自殺に追い込まれることのない社会へ――地域のつながりが命を守る NPO法人「自殺対策支援センター ライフリンク」代表・清水康之氏

自殺の原因は、「うつ病だった」「生活苦だった」などと断定され、単純化されることが多いのですが、実はそう単純ではありません。問題が複合し、深刻化して追い込まれた末に、死を選ばざるを得ない。前述した自殺に至るプロセスの始まりとなる問題も、考えてみれば、当事者が抱えることを望んでいたわけではありません。追い込まれて自ら命を絶たざるを得なくなっている現状があります。ですから、自殺ではなく生きる道を選べるような支援が必要なのです。

残念ながら、私たちの社会は自殺問題に十分対応できていません。実態の分析から自殺の背景を探っていくと、介護問題や多重債務、家庭内暴力やいじめといった、社会で問題とされている約70の要因に絞ることができました。この一つ一つは、サポートの程度の差こそあれ、国や自治体、民間団体が専門家を配置してすでに何らかの策が講じられており、むしろ手が打たれていないものを探す方が困難だと言えます。にもかかわらず、自殺を巡る状況がいまだ大きな改善を見せないのは、支援の範囲がそれぞれの問題の領域にとどまってしまっているからです。

冒頭、自殺で亡くなった方が平均四つの問題を抱えていたという調査結果を示しましたが、視点を変えると、自殺を食い止めるためには、最低でも四つの関係機関が連携して問題の解決に当たらなければならないということです。あるいは四つの支援策を連動させて対応に当たらなければならない。自殺という問題は「プロセス」で起きているので、対応も「プロセス」で行っていく必要がある。「点」のバラバラの対策ではうまくいかないということです。

【次ページ:生きる道を選ぶための支援のあり方】