【特別インタビュー 第34回庭野平和賞受賞者 ムニブ・A・ユナン師】 聖地エルサレムで、諸宗教対話による平和の実現に尽くす
神を愛し、隣人を愛する――その共通性を重んじ
庭野 平和を築くためには、まず相手を正しく知るということですね。平和のための教育も重要になりそうです。
ユナン そうなのです。「私も、あなたも人間であり、その事実をしっかり受け入れて、一緒に生きていきましょう」。このことを教え、共に学んで身に付けていくことが平和教育です。全ての国でなされるべきものであり、とりわけ私の国では、教育の中心をなすべきものだと考えています。
大切なのは、「一緒に生きる」ということ。どの人も、自分と同様に神によって創造されたものであり、この認識が全ての人と関係を築く基本になります。
また、平和教育が重要であるのは、私たち人間は、誰もが元々、無知であるからです。無知は平和の敵です。私たちは他者から多くを学ばなければなりません。
宗教に関する平和教育においては、さまざまな宗教の共通性、宗教全体の精神性を学ぶことに重きを置く必要があります。ユダヤ教、キリスト教、イスラームを取り上げる際、私たちはそれぞれの比較から始めがちですが、それでは、自らの宗教の優越性を誇るにとどまってしまい、理解が深まるどころではないからです。どの宗教も「神を愛しなさい」、そして「隣人を愛しなさい」と教えていますから、共通する教えを通して理解を深め合っていくことが大事になります。
CRIHLでは、イスラエルとパレスチナの学校教科書に、異なる宗教がどのように記述されているかを調べました。イスラエルの教科書に、キリスト教やイスラームの記述はほとんどなく、パレスチナの教科書にはユダヤ教の記述はほんの少しありましたが、キリスト教についてはありませんでした。子供たちは、異なる宗教についてほとんど知らないのです。私たちは、他の宗教について正確に記述するよう求めています。
また、宗教を基にした学校がありますが、当の宗教だけでなく、諸宗教について教えられていく必要性があると思います。週に一度、宗教の異なる子供たちが集う交流教室を設けたいのです。先生たちの中にはまだ、「とんでもない」と言う人がいますが、一緒に座って質問し合ううちに、自然と理解が深まっていくんですね。こうした体験は、子供の時からスタートした方がいいと思います。