【一般社団法人ビーラインドプロジェクト代表理事・浅見幸佑さん】見える・見えないを超えた働き方をつくる
一緒に楽しむ体験が大切

店内には点字で書かれたメニューを設置。また、晴眼者が点字の文化に親しめるよう、点字器の体験も行っている
――浅見さんはカフェのほかに、ボードゲームの開発も行っていると聞きます
そうですね。視覚以外の情報で遊べるボードゲーム「グラマ」を開発し、普及に取り組んでいます。カフェにもゲームにも、「見ても見なくても見えなくても楽しめるモノや場を増やす」という共通の目標があります。
皆さんは子どもの頃、その日初めて会った相手と外で遊ぶうち、すぐ友達になれた経験はないでしょうか。一緒に楽しむことで人は人とつながり、交流を重ねることで人生の財産となっていきます。だからこそ、視覚に障害があって、目で見ることを前提としたゲームやスポーツで遊んだり、職場で働いたりすることが難しい人とも、一緒に楽しさを共有できる瞬間を増やすことが重要だと考えています。
ある時、ボードゲームの体験会に参加した晴眼の大学生が、「失礼だけど、視覚障害者の人がこんなに笑うって初めて気づいた」と伝えてくれました。人間だから笑うのなんて当たり前と思うかもしれませんが、視覚障害者と日常で接する機会がなく、「町中で見かけるちょっと遠い存在」というイメージしかないと、実感しにくいのだと思います。視覚障害者と晴眼者が一緒に楽しみ、お互いの存在を近くに感じてつながるようになれば、社会は変わっていくはずです。
――今後、挑戦したいことは
目の見えない、見えにくい人の職業選択を広げることを目標に、最初の3年間で、視覚障害のあるスタッフを10人雇用したいです。また、現在は週1回の営業ですが、今後は別の曜日にも出店し、将来的には常設の店を構えたいと考えています。
視覚障害があっても楽しめるイベントや、新しいメニューの開発も進めています。今話し合っているのは、視覚障害者が食べやすいパフェを出すこと。パフェはたくさんの具材を盛り付けますが、目が見えない人は、容器からはみ出た部分の感触をスプーンでつかむことが難しいそうです。こうした悩みの声を、お客さんが視覚障害に興味を持ってくれるチャンスに変えて、気づきを提供できる体験の場をつくっていきたいです。
プロフィル
あさみ・こうすけ 2003年、東京都生まれ。立教大学在学中、授業で視覚障害者の生活を学び、視覚の状態に関わらず楽しめるモノや場を生み出す必要性を感じる。22年にビーラインドプロジェクトを設立し、ボードゲーム「グラマ」の開発や、福祉・障害をテーマにしたイベントの企画などを手がける。

MOONLOOP CAFE
東京都杉並区久我山5-24-1(京王井の頭線「富士見ヶ丘駅」から徒歩3分)
営業時間 毎週月曜日17時30分~21時30分(ラストオーダー21時)
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