【参議院議員・白眞勲さん】緊迫する北朝鮮情勢 今後の国際社会の対応は?
注視される米国、中国の動向
――米国は現状をどのように受けとめていると考えますか
米国はこれまでに少なくとも二度、北朝鮮にだまされています。最初は94年、カーター元米大統領が特使として訪朝した際に、金日成国家主席(当時)が核の放棄を約束しました。しかし、履行されず、秘密裏に核開発を続けていたのです。
次が2008年、ブッシュ政権時に核を手放す見返りとして、「テロ支援国家指定」を解除したのですが、またしても裏切られました。
ですから今回、トランプ大統領は「もうだまされないよ」という強い意思をもって臨んでいます。空母2隻を日本海に展開し、4月の中国の習近平国家主席との会食中に、北朝鮮に見せつけるようにトマホークをシリアに向け発射しました。習国家主席との会談では、中国に北朝鮮への対応を強く求めたと伝えられています。
北朝鮮の核開発やミサイル技術が非常に高度化したことによって、米国を刺激しているのは間違いありません。過去にだまされた経緯もあり、北朝鮮が本当に核を放棄したかを確認するまで、トランプ大統領は妥協しないと思います。
――北朝鮮は、米国の行動をどう感じていますか
米国の軍事力にはかなわないことを彼らも理解しているので、相当、緊張感を持っていると思います。だからこそ、より一層、金正恩体制の維持と国内の引き締めを強化しています。
金委員長は身内や党幹部であっても、ミスを犯したり、異を唱えたりすると厳しく制裁します。すると、周囲は自らの命を守るためイエスマンにならざるを得ません。これは危険な状況を招きかねず、非常に怖いことです。
一部では、現体制に対する国民の不満が高まっているとの報道もあります。しかし、秘密警察や隣組による密告制度などで恐怖政治を敷いているため、現状では国民が蜂起して政権を倒すようなことはないと思います。
――米朝の間に立つ中国の状況は
北朝鮮が崩壊するような事態になれば、最も影響を受けるのは中国です。中国東北部には朝鮮語を話す朝鮮族が200万人以上暮らしていて、有事の際には相当数の難民が流入すると予想されるからです。
中国は、核とミサイルの開発を苦々しく思っていますが、北朝鮮の体制が崩れてしまっても困るため、現状維持が一番いいと考えています。中国にとって最悪のシナリオは、北朝鮮が崩壊し、韓国に吸収されてしまうことです。そうなれば、米韓同盟により、中国と北朝鮮の国境である鴨緑江、豆満江を境にして、米軍とじかに向き合わなければならないからです。北朝鮮が挑発行動を繰り返し、米軍が介入することで朝鮮半島の現状のバランスが崩れることを、中国は最も懸念しているでしょう。
トランプ大統領は中国の本音を知っているからこそ、中国に対して温和な政策をとりつつ、同時に厳しくプレッシャーを掛け、北朝鮮問題の解決を促しているのです。