【JVCパレスチナ事業現地代表・大澤みずほさん】即時停戦に向けて最大の関心を

わがことと捉えてみる

――なぜ和平合意が実現しないのでしょうか

この問題は今に始まったことではなく、1948年に当時のユダヤ人が、現在のイスラエルとパレスチナを包含する領域に住むアラブ人の土地に、イスラエルを建国したことが発端です。その背景には、国連総会がユダヤ人とアラブ人にパレスチナの土地を分けるという「パレスチナ分割決議」を採択したことで、イスラエルに国際社会のお墨付きを与えてしまった事実があったことを忘れてはいけません。ですから、問題解決のために国際社会が積極的に協力する責任があるのです。そして、日本も国際社会の一員としてできることがあると思います。

ガザ地区北部のガザ市内で、イスラエル軍が行った爆撃によって崩れ落ちた建物の残がい。同地区の至る所に、こうした悲惨な光景が広がっている

なぜなら、日本は1956年の国連加盟以来、安全保障理事会の非常任理事国に、加盟国中最多の12回選出されているからです。これは常任理事国と共に国際社会への影響力が相応にあることを意味しています。また、世界で唯一の被爆国として、かつアジア諸国に侵略行為をした過去を持つ国として提言できることがあるはずです。イスラエルの後ろ盾に米国があるので一筋縄ではいかないと思いますが、日本は米国と良好な関係にあるからこそ、米国と緊密に連携して平和をリードし、問題解決に全力を尽くす必要があると思うのです。

――私たち日本人にとって身近にできる支援とは

パレスチナで起きていることや住民たちの思いを知って、そのことを周囲に広めてほしいです。日本で行われている停戦を訴える反戦イベントに参加したり、その様子をSNSを通じて拡散したりするのもいいと思います。ガザ地区でもインターネットが辛うじてつながっていますので、日本からの投稿なども見ています。現地の人々は、他の国や地域で次々と紛争が起きるニュースに触れながら、このまま自分たちの存在が忘れられていくのではないかと危惧しています。私たちが行動して、メディアを通して広めることも、現地の人々を勇気づける支援となります。

さらに、日本政府に対し、人道に沿って動くよう働きかける責任が日本国民である私たちにはあります。有権者である私たち一人ひとりが、世界の問題に働きかけてくれそうな政党や政治家を投票で選ぶことも、小さくても世界を変える行動の一つです。

他には国連やNGOへの寄付も、とても有り難いです。皆さまがJVCに託してくださる寄付は、皆さまの代わりに現地にお届けします。

イスラエルによるパレスチナへの軍事侵攻を私たちが黙って見過ごすことは、今後、こうした一方的な暴力行為が世界中で、日本の周辺で起きても、許していいことになってしまいます。そうならないためにも、共にパレスチナの人たちに関心を寄せて頂けたらと思います。

プロフィル

おおさわ・みずほ 1984年、北海道生まれ。看護師として救急医療に従事した後、青年海外協力隊に参加。パラグアイの地域病院や学校で健康啓発活動などを行う。人々が抱える問題には、保健医療の分野を含むさまざまな社会的要因が複雑に関係していることを痛感し、より包括的な支援活動に携わることを目指して、2018年にJVCに入職。パレスチナ事業東京担当、同現地担当を経て現職。