【WCRP/RfP日本委理事長・戸松義晴さん】平和への一歩につながる行動を共に――非暴力訴え、祈り続けて

きめ細かな救いで信頼関係を築くことが重要

戸松師が住職を務める心光院にて

――一人ひとりの心が平和かどうかも大切になりますね

そうですね。ですから、今、既存の宗教団体は変化を求められています。「うちの団体ではこうだから」と、偏った見方を提示するのではなく、一人ひとりの多様性を受け入れて、オーダーメイドのきめ細かい救いによって関係性を築いていくことが重要です。

医療は、患者さんのカルテに沿ってオーダーメイドの治療を行います。診察の際に、自分の前の人が診察室から出てきたとしても、すぐには呼ばれませんよね。あれは、医師が前回のカルテを見て、状況、薬の向き不向きなどを踏まえ、今回はこんな治療方針をとっていこうと患者さんと相談する準備をしているのです。教科書通りだけではなく、そうした個人と向き合う姿勢が、宗教者にも求められています。

公助、互助、自助といいますが、貧困や障害といった困難を抱えた人の中には、公助からこぼれ落ちてしまう人もいます。効率性など関係なく動ける宗教団体だからこそできることがあるはずです。

――今後の抱負を

社会の動きを見ながら、新たに必要とされることはチャレンジしていきます。そのためには、時には“空気を読まない”姿勢も大事にしたいと思っています。皆が空気を読んでいたら、新しいものは生まれてきません。最初は、「けしからん」と否定されてきたことから、新しい切り口が開いて、スタートしていくことは往々にしてあります。思っていることを伝えて、意見が対峙(たいじ)することもあるでしょうが、そうやって互いに理解を深めて、共に平和の道を歩むのです。

また、日常を大切に、どんなに難しい議題の場でも、笑顔でいたいと思っています。笑顔がない場で平和を語ってもダメです。「smile to myself,smiles to others」という言葉がありますが、自分にほほ笑めない人が他の人に本当にほほ笑みかけることは難しいものです。笑顔があふれていると平和を感じますよね。そんな笑顔を大切にしたいです。

プロフィル

とまつ・よしはる 1953年、東京都生まれ。慶應義塾大学、大正大学大学院を経て、ハーバード大学神学校で神学修士号取得。現在、浄土宗心光院住職、浄土宗総合研究所副所長、国際医療福祉大学特任教授を担っている。全日本仏教会理事長、日本宗教連盟理事長などを歴任。趣味は音楽鑑賞(ソウルミュージック)。