【コミュニケーション戦略研究家・岡本純子さん】人とのつながりは人生の糧 誰もが孤独を癒やす存在
「自分は誰かを支えられる存在なのだ」と自信を持って
――孤独にならないために心がけたいことは
人を孤独から救う鍵として、「コミュニケーション」と「コミュニティー」の二つが挙げられます。まず、人とのつながりをつくるための基礎体力である「コミュニケーション力」を鍛えること。筋肉と同じで、使わなければ衰えます。人は精神的に孤立した状態が長く続くと、「誰にも相手にされない」という社会の片隅に追いやられたような疎外感を抱き、周囲を敵と見なすなど、物事をネガティブに受けとめる傾向が表れるといわれます。そうなると生きづらさは増すばかり。そんな状況に入り込まないために、道行く人に挨拶するなど、日頃から誰とでも気軽におしゃべりできるよう訓練してもよいかもしれません。
「初対面の人と知り合う機会などない」と言う人もいるでしょう。それは勘違いで、縁は周囲にたくさんあります。買い物に立ち寄った八百屋さんの店主や銭湯で一緒になった人との何げない会話は、心を弾ませてくれるでしょう。そこから親交が深まり、互いに助け合う間柄になるかもしれません。
基本は、自分の話より相手の話を“聞かせていただこう”という姿勢です。そして、相手に気持ちよく話してもらうには質問をすること。「どう思う」「どうしたい」「調子はどう」といった「ど」から始まる質問を繰り返していけば雑談は自然と弾むものです。面と向かって人と話すのが苦手という男性は、スポーツやゲームといった共通の活動や目的を通じて、相手と肩を並べながらコミュニケーションをとるのも効果的でしょう。
そして、コミュ力を磨くためには、新たな居場所が必要になります。「夢中になれるもの」「得意なもの」「社会が求めるもの」という三つの視点から、利害関係を抜きにした人とのつながりをつくることを提案します。
例えば、趣味のサークルや習い事を始める、あるいはボランティア活動、教会などの宗教的な集いに進んで参加することもよいでしょう。そのような場で自身が培ってきた技能を生かして人に貢献できることを実感すれば、自己の存在価値を改めて確認できます。「自分は必要とされている」という自信が芽生え、日々の生活に張り合いが出るでしょう。
人とのつながりは何物にも代え難い人生の糧であり、なくてはならないものです。たとえ今、孤独にさいなまれているとしても、あなたの存在が必ず、どこかで誰かの孤独を癒やします。「孤独な自分は生きていても何の意味もない」と悲観するのではなく、ぜひ、「自分は誰かを支えられる存在なのだ」と自信を持ってつながりをつくっていってください。そうすれば、孤独に苦しむことはなくなり、誰もが幸福な人生を歩めると信じています。
プロフィル
おかもと・じゅんこ コミュニケーション戦略研究家。株式会社グローコム代表取締役社長。企業や官僚、政治家などのプレゼン・スピーチ等のコーチングに携わるほか、中高年男性の孤独問題を研究。著書に『世界一孤独な日本のオジサン』(角川新書)など。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。英ケンブリッジ大学大学院国際関係学修士。米MIT比較メディア学元客員研究員。
新刊紹介
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