【恵泉女学園大学学長・大日向雅美さん】コロナ禍での子育てや暮らし 不安やストレスを減らすには

子供たちが何より喜ぶのは、親が笑顔でいてくれること

――コロナ禍での生活は、夫婦関係にも影響があるようですね

夫は仕事だけ、妻が全ての家事、育児を担うという構図は、これまでも問題視されてきました。男性の中には、ステイホームの期間に妻の負担を目の当たりにし、協力するようになった方も増えています。一方で、これまで以上に関係が悪化し、離婚にまで発展してしまうケースもあります。これは、以前からある夫婦のコミュニケーションの問題が、コロナ禍で顕在化した場合が多いようです。

夫婦の関係は長年かけて構築されているものですから、その改善も一筋縄にはいきません。しかし、日々の心がけで関係を修復する、あるいはそのきっかけをつくることはできると思います。

例えば、一緒にいる時間が長いのですから、お互いを名前で呼び合うことからスタートしてみてはどうでしょうか。最初は気恥ずかしいですが、知り合った当初の気持ちもよみがえって、会話が増えたという話をよく聞きます。また、けんかをしても、翌朝に明るくあいさつすることで気持ちを切り替えやすいですね。

さらに、夫婦がそれぞれ話し役、聞き役に分かれて、話す方は胸の内をさらけ出し、聞き手は反論せずに最後まで聞き切るということを相互に行うのも有効です。じっくりと話を聞くと、相手の言動の背景にある理由を理解できます。同時に、相手の視点で自分を見て省みることもできるのです。

不安の多いコロナ禍の現状で、心のゆとりを持つことは簡単ではないでしょう。初めは何か一つでもよいので、これまでできなかったことに一歩を踏み出すと、関係が改善していくように思います。

写真提供=アートスタジオスズキ

――地域における子育て支援に変化はありますか

それぞれに工夫して、活動されています。あるNPO法人は、早朝の公園で会いましょうと呼びかけて、遠くから手を振り合い、「元気に過ごしている?」「一緒に乗り越えていこうね」と声をかけ、互いを励まし合う取り組みをしたと聞きます。

「あい・ぽーと」でも昨年、日頃支援してくださっている方々(50人ほど)が「みんなで遊べる日を楽しみにしています」「頑張りすぎないで、自分をほめてあげて」といったメッセージを記し、その紙を持った姿を撮影して、施設を利用する親子に動画を配信しました。ビデオ通話機能を使って、折り紙講座や絵本の読み聞かせも行っています。直(じか)に触れ合えなくても、オンラインを通した心の交流は、互いの励みになっています。コロナ禍になって、人のために役立ちたいと考える方も増えているようです。そうした方々と、社会貢献に取り組む団体同士がつながっていくことが必要になると感じます。

今、子育て家庭への支援は行われています。母親たちは一人で悩まずに、つらい時は「つらい」と安心して声を発し、頼ってほしいです。それを受けとめる人たちが地域にいることを信じてください。母親たちの声が新たな社会を築く原動力にもなります。

子供たちが何より喜ぶのは、親が笑顔でいてくれることです。心身のゆとりを保ちながら、「尊い命を精いっぱい生きてほしい」とわが子の成長を見守り、応援して頂きたいなと思います。

プロフィル

おおひなた・まさみ 1950年、神奈川県生まれ。恵泉女学園大学学長。東京都立大学大学院博士課程満期退学。学術博士(お茶の水女子大学)。国の少子化対策・子育て支援の各審議会委員等を務める。著書に『女性の一生』(日本評論社)、『もう悩まない! 自己肯定の幸せ子育て』(河出書房新社)、『増補・母性愛神話の罠』(日本評論社)など多数。