【元東レ経営研究所社長 佐々木常夫さん】苦しみを乗り越える原動力 幸せになるという強い意志を

大手化学企業に入社し、事業改革や破綻寸前の会社の再建などを手がけ、取締役を務めた佐々木常夫さん。この間、家庭では、40回以上の入退院を繰り返した妻の看護、自閉症の長男を含めた3人の子供の育児に尽くした。どちらも手を抜かず、自己をコントロールし、「幸せになる」という強い意志を持ち続けたと語る。ビジネスや生き方に関する書籍を多数発刊してきた佐々木さんに、幸せになる秘訣(ひけつ)を聞いた。

愛されたいより愛すること 相手の良さを見つけ、認める

――人は何のために生きるのでしょう?

人間は幸せになるために生きている。自らの人生を振り返って、私はしみじみそう思います。早くに父が亡くなり、母が苦労して私たちきょうだい4人を育ててくれました。母はとても頑張り屋で前向きな性格だったので、明るい家庭でしたが、それでも私は「幸せになりたい」とずっと願って生きていたことに、ある時気づいたのです。誰もがそのために生きているのではないでしょうか。

幸せになる――そのためには二つのことを大切にしなければなりません。一つは、どんな時も自らの目標に向かって「成長」していくことです。歩む道は人それぞれ違っても、与えられた中で自身を磨いていくことを心がけていけば、さまざまな能力が身につき、物事に対する理解が深まり、周りの要望に多く応えられるようになって、それまで以上に人として練られていきます。

もう一つは、自分以外のものへの「貢献」です。家族や会社、地域社会などの役に立つように、相手の立場や社会全体のことを考えて行動していくことです。

自らを磨き、役に立つことを続けていくことによって、周囲からの信頼が高まります。感謝されることもあるでしょう。それによって、自身の心はとても満たされます。人間が幸せになるためには成長と貢献の二つが欠かせません。

――著書の中で度々、「人を愛する」ことが大事とつづっています

人は誰もが心に、「愛されたい」「認めてほしい」という願いを持っています。私もそうでした。でも、逆説的ですが、まずは自分が相手を愛することによって、相手から愛されるようになります。これが真実ではないかと感じます。

私が考える「愛する」とは、具体的には相手を理解し、認めること。そして、優しさをかけていくことです。誰にも欠点がありますが、必ず良いところもあります。まずは自分から相手に寄り添い、その人の良いところを見つけることが好きになるポイントです。

心理学者のアルフレッド・アドラーは、こう言っています。人は必ず他者と関係しながら生きており、その中に喜びを見いだし、幸せを感じる、と。ところが、人間の全ての悩みもまた、対人関係に起因しているとも断言しています。その悩みを乗り越えるためには、人間関係を上司と部下、親と子、年上と年下というような縦(上下)で捉えるのではなく、横(対等)に捉えることから始めてみると良いようです。

私は30歳の時からそういう気持ちを持ち、年下にも必ず「さん」をつけて呼ぶようにしました。管理職に就いた後、部下に対しても同じです。なぜなら、年下でも優れた能力を持っています。同じく、私も相手より得意なものがあります。どんな人にも優れた面があり、そのことに敬意を払って仕事をしよう、人間関係をつくろうと思ったのです。

仕事をする、会社で働く、どちらにせよ、周囲と良好な関係を築くことが不可欠です。先ほど話したように、相手の良さを見つけ、それを認めていくと好意を持って触れ合えるようになっていきます。義務感からではなく、次第に、この人のために何かしてあげられることはないかと前向きに考え、相手の話を聞くといった行動もできるようになります。

仕事の効率化には、コミュニケーションと信頼関係が重要だと思っていますが、これらを行うことで組織が活性化しました。多くの部下を持ちましたが、退いた今も、当時の部下が訪ねて来てくれて、うれしいですね。

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