【アトリエエム株式会社代表取締役・三木啓子さん】パワハラへの取り組みを 企業文化育むチャンスに
双方の意見をよく聞き、事態の原因や経緯を探る
――正当な指導とパワハラの線引きが難しいという課題もあるようですが
法律の施行に合わせて、パワハラとなる指導の具体例が提示される予定です。各企業はそれを参考にして、「パワハラにならない指導方法」を確立することが重要です。管理職がそのスキルを身につけ、従業員と管理職が垣根を越えて協力し、それぞれの職務を遂行していける、そんな職場を築いてほしいと思います。
もちろん、組織には立場の上下関係があり、さまざまな考えの人が働いていますから、パワハラをゼロにすることは簡単ではありません。パワハラをなくしていく上で大切なのは、パワハラの行為者を排除するのではなく、一つ一つのパワハラの言動(指導)を排除していくことです。まして、被害者を排除するようなことがあってはなりません。
ですから、各企業や組織は安易な対応を取らず、「なぜ、行為者はパワハラ的な指導を行ったのか」「なぜ、被害者はパワハラだと感じたのか」について双方の意見をよく聞き、事態の原因や経緯を探っていくことが重要になります。問題が発生した時に、そうした調査を重ね、パワハラが発生しにくい環境を少しずつ企業内に構築していくことが、ひいては組織に関わる全ての人の権利を尊重し、それによって風通しの良い企業文化の醸成につながっていくのではないでしょうか。
「明日もこの職場で働きたい」と従業員に思ってもらえる組織――そうした企業に生まれ変わるチャンスが、パワハラの問題を丁寧に解決していく中にこそあるのではないかと考えています。
プロフィル
みき・けいこ アトリエエム株式会社代表取締役。産業カウンセラー。民間企業、男女共同参画センター等での勤務を経て、2005年に同社を設立。企業に向けたパワハラ、セクハラ等あらゆるハラスメントの防止研修、人権研修、メンタルヘルス研修、ワーク・ライフ・バランスならびに人材育成事業等を行っている。