【俳優・國村隼さん】それぞれの「かぞくいろ」 変わらない家族の愛と絆
貧しくとも、心が愛情で満たされていれば
――絶えずスマホを手放せない生活というのも寂しいですね
現代社会に欠けている潤いとは一体何でしょう。一言で言うと、それは愛情だと思います。高度経済成長期以降、日本人は「義理と人情」というような、じめじめした人間関係を嫌い、お互いのプライバシーに踏み込まないような、あっさりとした関係を好むようになりました。しかし、今日のようにからっからに乾いてしまった社会にはむしろ愛情という水分を補給して潤いを与える必要があります。
僕は戦後10年の生まれで、生活は貧しかったのですが、心は愛情で満たされていました。それに、とにかくみんな優しかった。母親に頼まれて、近所の家に醤油(しょうゆ)を借りに行くことは何回もありましたし、「そこまでせんでもええ」っていうくらい、他人に尽くすお人よしが大勢いました。多少の貧富の差はあっても、戦後、一生懸命みんなが頑張っていたのでしょう。家族に限らず、地域の中で子供を育てていくという意識が人々の中にはあったのだと思います。
そういう意味でも、今回の作品は、東京や大阪といった大都会ではなく、日本の原風景ともいえる九州の田舎が舞台だったからこそ、リアリティーをもって描けたのかもしれないですね。
――最後にファンの皆さまにメッセージを
とにかく不器用な三人、それぞれが努力して一つの家族になろうという物語です。今回の作品を通して、ごくありふれた日常生活の中にある家族の幸せというものを感じてもらえたらうれしいですね。
プロフィル
くにむら・じゅん 1955年、熊本県生まれ。大阪府出身。1981年に「ガキ帝国」(井筒和幸監督)で映画デビュー。以降、国内外の数多くの作品に出演。「キル・ビル Vol.1」(クエンティン・タランティーノ監督)、「マンハント」(ジョン・ウー監督)など海外の作品にも出演し、韓国で約700万人の観客を集めた「哭声/コクソン」(ナ・ホンジン監督)では、「第37回青龍映画賞」の男優助演賞と人気スター賞の二冠を獲得し、注目を集めた。
- 公開情報
「かぞくいろ― RAILWAYS わたしたちの出発―」
11月30日(金)から全国公開 - 配給:松竹
同映画公式ウェブサイト http://www.railwaysmovie.jp/