【東京理科大学研究推進機構総合研究院・関澤愛教授】健康志向が防火につながる 高齢者と火災の意外な関係
初期消火にあたるときには……
――火災の被害を最小限に抑えるためにできることは何でしょうか
火災の早期発見が何よりも重要です。そのために消防庁が力を入れているのが、「住宅用火災警報器」の設置です。住宅火災は、過去25年間で全般的に減ってきているのですが、2008年に警報器の設置が義務づけられてからの方が明確に減少していますので、効果があることは間違いありません。
もったいないことに、お風呂の湯気や魚料理などで出た煙による誤作動を嫌がり、外してしまう人がいます。高齢者の場合、特に早期発見が火災から身を守るカギになりますので、警報器は適切な場所に必ず設置しましょう。警報器の設置が義務化されてから間もなく10年が経ちますので、作動の確認や住宅用火災警報器自体の交換を行うなど、メンテナンスをしておきましょう。
――初期消火の際に気をつけるべきこととは?
初期消火を行う際に重要なのは、初期消火の限界を知ることです。燃えている炎の高さが自分の背丈を超えてしまったら、もはや素人に消すことはかなり難しいので、速やかに逃げてください。危険なのは、火が壁や天井に燃え移り、その後、爆発的に部屋中に火が回る「フラッシュオーバー」という現象です。火が天井に届いてからおよそ2分で、部屋の中が火の海になります。
ですから、初期消火に当たる前に、まず子供や身体が不自由な高齢者を避難させます。初期消火に失敗して慌てて消防署に電話をかけているうちに、火の中に取り残されてしまうケースが多いのです。「火事だ! 119番に通報して」と近所に応援を求めるのも有効ですから、お隣さんとの日頃からの関係づくりに努めることも欠かさないようにしたいものです。
初期消火に役立つものとしては、家庭用消火器の備え付けをお勧めします。火災の出火要素には、木材・油・電気と3種類ありますが、「ABC粉末消火器」という商品がその全てに対応しています。ホームセンターなどで数千円で購入することができます。
火災を引き起こさないための対策、火災発生時の早期発見と初期消火のための心得、この二つを押さえておくだけでも、火災とその被害のリスクを大幅に下げることができます。冬を前に備えておくようにしましょう。
プロフィル
せきざわ・あい 1948年、大阪府生まれ。京都大学大学院工学研究科博士課程在学中に、自治省(現在の総務省)消防庁消防研究所に入所。独立行政法人消防研究所上席研究官、東京大学大学院都市工学専攻特任教授を経て、現職。消防庁の消防審議会専門委員、東京都の避難場所検討委員会委員など国や自治体のさまざまな検討委員会委員を務める。