【登山家・貫田宗男さん】果てることのない山の魅力、冒険心を持って挑み続け
自然に親しみながら 山の恩恵に感謝する
――山登りで気をつけることは?
まず、無理をしないことが一番大事です。歩幅を狭くし、足の裏全体に体重を掛けるように歩いてください。歩く速さは、花や景色を楽しむ余裕があるぐらいゆっくり歩くことを心がけましょう。
休憩はそれぞれの体力によるので一概には言えませんが、1時間に5分から10分程度休むといいと思います。脱水は脳卒中などさまざまな症状を引き起こす要因になるため、水分は休憩のタイミングにかかわらず摂取してください。喉が渇いたと感じる時点ではもう手遅れですので十分注意しましょう。飲料は水よりも吸収率のいいスポーツドリンクをお勧めします。
リュックサックはダラッと背負うと重さで後ろに引っ張られて体力を消耗します。ストラップをしっかりと締め、体に密着させるようにしてください。低体温症を防ぐため、休憩中は上着を羽織る、汗をかいたらシャツを替えるなど、小まめな調節も心がけましょう。
――今年もまもなく「山の日」を迎えます。登山やトレッキングを楽しむ読者へのメッセージを
昔は、エベレストに登ることや、難しいルートでの踏破に価値があるというような時期もありました。しかし、今は自分の充足感を得られる山登りが良い登山であり、登り切った先に何があるかという興味や好奇心、冒険心、チャレンジ精神が大切だと感じます。
山登りを始めるきっかけは、ファッションでも、健康維持でも、何でもいいと思います。山は私たちに多くのことを教えてくれます。山を歩き、自然に親しみ、たくさんの充足感が得られるよう、ぜひ、登山を楽しんでください。
プロフィル
ぬきた・むねお 1951年、山口県生まれ。佼成学園高校で山岳部に入り登山を始める。2度のエベレスト登頂に成功。95年に「ウェック・トレック」(WEC)を創業し、国内外で登山隊や撮影隊のコンサルタント、コーディネートを行う。日本テレビの番組「世界の果てまでイッテQ!」の登山部などにも携わる。日本山岳・スポーツクライミング協会国際委員会常任委員などを務める。