【七宝焼職人・田村有紀さん】伝統工芸を再興させるために
ブランドを起こし、新たな客層に発信
――職人として取り組んでいることは?
七宝焼はこれまで、「花瓶」と呼ばれる立体の作品や、「額」と呼ばれる平面の作品が主流でしたが、私はそれに加え、七宝焼の魅力をより多くの方に知って頂き、手に取った方に愛着を持って長く大切にしてもらえたらと、新たなチャレンジとして、ピアスやネックレスといったアクセサリーなどの小物作品を中心としたブランドを起こしました。
海の波や森の木といった自然から来るイメージを表現したデザインが多いですね。図柄はあえて単調にして、目を引く配色にしたり、見てもらいたい部分が際立つように色合いを調整したりと、表現を工夫するよう心がけています。
七宝焼の最盛期には、私の父をはじめ地域にいた窯元は、受注生産に追われ、それだけで手いっぱいな状況でした。ただ、今はそうした状況ではないので、いろいろなものからイメージを膨らませ、それを現代に合うような形で作品に反映させています。でも、うまくいかずに失敗した作品も山のようにありますけど(笑)。
――七宝焼を多くの人に知ってもらいたいですね
そうなんです。高齢世代の方は、小学校の体験授業で七宝焼ブローチを作った人も多いようで、七宝焼の認知度もまだあるのですが、若い世代の人からは、「ろくろを回して作るんでしょ?」などと言われ、七宝焼を全く知らない人もいます。でも、知ってもらったら絶対に七宝焼を気に入ってもらえる。私はそう信じています。
どうしたら七宝焼を身近に感じてもらえるか――そう考えた時、これまでもあった七宝焼のアクセサリーや小物をブランド化し、誰もが手に取りやすいジュエリーの分野に展開することで、多くの人の目に触れてもらえればと、オリジナルのブランドを起こしました。
以前は、業者に卸すのが一般的でしたが、見よう見まねで作品を撮影し、自身で開設したウェブサイトに掲載して、インターネット販売も始めました。また、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)も駆使し、少しでも多くの人の目に触れるようにと試行錯誤を重ねています。