作家・石井光太氏 広島の歴史に迫る群像ノンフィクション『原爆 広島を復興させた人びと』(集英社)を発刊

本紙の連載『現代を見つめて』の著者で、作家の石井光太氏がこのほど『原爆 広島を復興させた人びと』(集英社)を出版しました。

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1945年8月6日に起きた惨劇の実相を世界に伝える広島平和記念資料館――その生みの親である長岡省吾は、広島に何が起きたのかを後世に残すため身命を賭して活動した。しかし、今、その名を知る人は少ない。歴史に埋もれた長岡の実像に迫り、復興の歩みをつづったのが本書だ。

戦前、戦時中に地質学者であった長岡は、同僚の安否を確認するため、原爆投下の翌日に広島市に入った。そこで、高熱を持った石の異変から特殊な爆弾が使われたと直感し、以降、残留放射能に満ちた市内を歩き、鉱物などを収集、記録し続けていった。その資料がやがてヒロシマを伝えていくことになる。

「今もなお日本が原子力の恐怖と隣り合わせであることを再認識させることが、資料館の役割の一つだと考えていたにちがいない」と著者はつづる。長岡にとって資料館は、二度と戦争を繰り返してはならないということと、さらに、核兵器を含む核の脅威を世界に訴える価値あるものだったが、果たして現実はどうなっていったか――。

長岡に加え、世界的な建築家として知られる丹下健三、“原爆市長”と呼ばれた浜井信三、広島平和記念資料館7代目館長を務めた高橋昭博などについても取材。長岡と意志を同じくして復興に尽くした人たちの生きざま、時代を経ても原爆を直視し収集し続けた長岡の経緯を紹介し、いのちの尊厳に基づく平和とは何かを問い掛ける。

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『原爆 広島を復興させた人びと』
石井光太著
集英社
1600円(税別)

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