カズキが教えてくれたこと ~共に生きる、友と育つ~ (9) 写真・マンガ・文 平田江津子

「同じ仲間」として対等に関わる同級生たち ②

今思い出しても涙が出てくるのは、中学校最後の学校祭です。有志によるステージ発表で友だち数名がコントを披露した後、二人がカズキを連れて再び登場してきました。「皆さん、平田カズキくんを知っていますか?」と語り始め、カズキと過ごして楽しかった思い出をそれぞれに話しました。

最後に、「カズキがいたから学校生活が楽しかったんです。カズキは障害者ですが、かわいそうでも不幸でもない、僕たちの大事な仲間です。廊下で会ったらどうかカズキに声を掛けてください!」と頭を下げたのです。その後、クラス全員がステージに上がり、カズキを囲んで、カズキの得意なアンパンマンの歌を全員で大合唱。会場はあたたかな手拍子と拍手で包まれました。

何も聞かされていなかった私は、驚きすぎてしばらくぼう然としていました。

この友人たちは、他学年の生徒によるカズキへの無理解を感じたことがあり、この機会にカズキのことを全校生徒に知ってもらおうと自発的に企画したものだったと後から聞きました。自分の友だちが誤解され、偏見を持たれていることが悔しかった、そんな思いからの行動だったのです。

学校の廊下に貼ってあった学校祭の感想文を読むと、多くの子が「カズキのことを全校生徒に知ってもらえてよかった」と書いていました。友だちを思って自分のことのように喜ぶみんなの気持ちには素直に感動しました。

法華経の方便品にある「仏種は縁に従(よ)って起(おこ)る」という一節を思い出しました。すべての人が「仏性」を持っており、何かのきっかけ(縁・条件)に触れて初めて現実に現れてくる、という教えです。これを読ませて頂き、カズキは与えてもらっているだけではなかったとハッとしました。カズキの存在が「きっかけ」となり、みんなの仏性が目に見える形になって現れたと捉えると、まさに「共に生きる、友と育つ」――お互いに仏性を引き出し合った姿だったと気づいたのです。

卒業して5年、今でも友だちと変わらぬ関係が続いています。今年、成人式を迎えたカズキは友だちから誘われ、担任だった曽我部昌広先生も介助者の一人となり、みんなと一緒に市の式典に参加しました。

私は思わず、カズキが中学3年生の時に友だちからもらったバースデーカードを引っ張り出しました。

「……成人式、一緒に参加しよう! 飲み会もしよう! 旅行もするぞ! みんなカズのことが大好き。卒業しても一生友だち♡」

旅行にも数回行き、成人式後の飲み会にも参加したカズキ。みんなの「これをやりたい!」が、今日ですべて叶(かな)ったのだなぁと、感無量でした。

プロフィル

ひらた・えつこ 1973年、北海道生まれ。1男3女の母。立正佼成会旭川教会教務部長。障害のある子もない子も同じ場で学ぶインクルーシブ教育の普及を目指す地元の市民団体で、同団体代表である夫と二人三脚で取り組みを進めている。