立正佼成会 庭野日鑛会長 11月の法話から

11月に大聖堂で行われた式典から、庭野日鑛会長の法話を抜粋しました。(文責在編集部)

女性の徳

私も母のおかげで、こうして育っております。世に母の徳ほど、尊く、懐かしいものはありません。母は子どもを生み、育て、子どもを教え、苦しみを厭(いと)わず、与えて報(むくい)を思わない。子どもと共に憂(うれ)い、悲しみ、喜ぶ。体験説法を伺って、そうした母の徳を思い出しました。

また、「婦徳(ふとく)」(婦人の徳、女性の徳)ということも、とても感じたわけであります。

佼成会の信者さんは大体、女性です。母親の徳、あるいは婦徳ということが、私はとても大きな働き、力を持っているのではないかと思います。己(おのれ)のことを忘れて人を思うこまやかな情愛、そこから閃(ひらめ)く睿智(えいち)の光、ゆきとどく注意。そして、いろいろな苦しいことも一身に受けて、人さまの悩み苦しみをしっかりと受け取って、それにどう対処して、仏さまの教えを分かって頂けるかと尽くされる方々が多いわけであります。そうした方々のおかげさまで佼成会は成り立っていると言っても過言ではないわけです。
(11月1日)

「ありがとう」の深い意味

日本では、「ありがとう」と感謝することが大事だと教えられています。「ありがとう」を漢字に表すと、「有(う)」と「難(かた)い」という字で、「有り難う」となります。滅多にないこと、ほとんど奇跡的なこと、という意味合いが込められています。

そのことに関して、私より2歳先輩の村上和雄先生(筑波大学名誉教授)が、本の中でこのようなことを言っておられます。

お釈迦さまが阿難(あなん)というお弟子さんに、「人間に生まれたことをどれくらい喜んでいるか」と尋ねられたそうです。それに対して阿難は、ちょっと答えに窮して、苦しんでいました。そのときに、お釈迦さまがこのように言われたそうです。

「果てしなく広がる海の底に、目の見えない亀がいて、百年に一度、海面に顔を出す。海には、小さな穴がある一本の丸太が漂いながら浮いている。

阿難よ。百年に一度浮かび上がるその亀が、その拍子に、穴に頭を入れることがあると思うか」

そうしましたら阿難は「とてもありえないことです」と答えました。そしてまた、お釈迦さまは、「ところが阿難よ。私たちが人間に生まれることは、亀が丸太棒(まるたんぼう)の穴に頭を入れることがあるよりも、難しいことなのだ。有り難いことなのだ」と教えられたというのであります。

私たちは、人間として生まれてきたことを当たり前と捉(とら)えがちです。実は何億年、何兆年に一度しかないような稀(まれ)なことなんだという意味合いを、お釈迦さまが教えられたということです。私たちが普段使っている「ありがとう」という言葉の意味合いは、そういうことであります。
(11月1日)

日々の感謝こそ

日本人は「おかげさま」という言葉もよく使います。何といっても両親があってこそ、われわれは生まれてくるわけでありますから、最初は両親のおかげさま、またご先祖のおかげさま。もう少し大きく宇宙を眺めると、太陽のおかげさま。水がなければ生きていけませんから、水のおかげさま。さらに空気のおかげさま。そして、私たちのいのちの元である地球の大自然のおかげさま。そうした森羅万象のおかげさまで、今ここにいるわけであります。

そして食事を頂くときに、「いただきます」という言葉をいつも使います。私たち(佼成会員)は、食事の前には「仏さま、自然の恵み、多くの人に感謝していただきます」(「食前感謝の言葉」)と唱えます。

「ありがとう」とか「おかげさま」とか「いただきます」とか、ごく普通の簡単な言葉でありますけれども、こうした言葉を日頃の生活の中で大切にしていくことが、とても大事です。そうした言葉に心を込めていきたいと思います。
(11月1日)

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