年頭法話 立正佼成会会長 庭野日鑛
自己を進化してゆこう
「人を植える」ことは将来を見据えた社会づくり、国づくりの最重要課題
あけまして、おめでとうございます。
昨年は、教団創立八十周年という大きな節目の年でした。今年からは、いよいよ創立百年に向け、皆さまと心一つに、さらなる精進をさせて頂きたいと思っております。
その意味を込め、私は、「平成三十一年次の方針」を次のようにお示ししました。
天地自然は、一瞬もとどまることなく、創造、変化を繰り返しています。私たちもまた、天地の道理(どうり)の如(ごと)く、停滞(ていたい)することなく、何事に対しても、日々新たな気持ちで取り組んでいくことが大切であります。
今年、本会は創立八十一周年を迎えました。その今日に及ぶ歴史の礎(いしずえ)は、開祖さま、脇祖さまをはじめ、先輩の幹部の皆様、信者さんの寝食(しんしょく)を惜(お)しまぬご尽力によって築かれてきたものです。
私たちは今後、教団創立百年に向けて、一人ひとりが、創造的な歩みを進める確(かく)たる志(こころざし)をもって、そのご恩に報(むく)いてまいりたいと思います。
昨年とほぼ同様の内容ですが、このことは、本会会員として、常に大事にすべきことです。
この年次方針の中に「創造的な歩み」という言葉があります。これは、単に「新しいものをつくり出す」という意味ではありません。
仏教は、勝ち・負け、成功・失敗、新しい・古いといった見方を超えた普遍的な価値を大事にします。つまり、人間の営みに真に力を与えるのは、いつの時代も、明るい心、優しい心、温かい心であります。それを一人ひとりが、家庭、学校、職場、地域、また世界で、惜しむことなく、そして今までの自分から一歩踏み出して表現するのが、本当の意味の「創造的な歩み」であると思います。
そうした根本を忘れることなく、それぞれの個性をいかして、身近な実践に結びつけてまいりましょう。
私は、教団創立八十周年に際し、来たるべき百年を展望して、「人材育成――人を植える――という根本命題に全力を尽くしていくことが、私たちの大事な務め」と申しました。
「人を植える」という言葉は、中国古代の書物に出てまいります。
以前、年次方針の「付記」でも紹介した「一年計画ならば穀物を植えるのがいい。十年計画ならば樹木を植えるのがいい。終身計画ならば人を植える〈育てる〉のに及ぶものがない」という一節であります。古くは、「植える」を「樹(う)える」と読んでいたことから、「三樹の譬え(さんじゅのたとえ)」と言われています。
人を育てることは、「終身計画」――人間が一生をかけて取り組むべきテーマであり、将来を見据えた社会づくり、国づくりの最重要課題であるということです。
また人を育てることは、大地に一本一本木を植えることになぞらえることができます。もしその木が真に根づいたならば、植えた人がいなくなろうとも、木はどこまでも生長をやめません。そのように、自立して、いきいきと生きる人間を育成する大切さを、「人を植える」という言葉で表しているのです。