立正佼成会 庭野日鑛会長 4月の法話から

画・茨木 祥之

人を育てるには

教団も80周年を迎えまして、100年に向けて、これからいよいよ宗教教団として「人を植える」、人材育成ということに務めてまいりましょう、と申し上げています。

日本だけでなく、世界の政治、経済も、なかなか難しい時代になっています。政治、経済をはじめ、教育、科学とか、人間の生活の中にはいろいろな部門がありますが、宗教は、そうしたあらゆることの一番のもと、根本になるものだといわれます。宗教がしっかりとしなければならない――宗教者である私たちが、一所懸命に宗教の有り難さ、尊さを人さまにお伝えしていくことが、とても大事な時代になっていると思います。

そして、「人を植える」、人材育成をしていく上においては、今住んでいる国を自分たちで良くしていこうという気持ちに、みんながなっていかなければなりません。今、経済は相当良いほうですが、政治は政治不信といわれ、なかなか振るわない状態です。青少年が、自分の国に誇りを持って生きていくようになると、「人を植える」、人材育成も、勢いがついていくと言ってもいいかもしれません。自分の国を「良い国だ」と誇れる、そういう国になっていかないと、人材育成は、とても難しいと思うのです。
(4月15日)

「おかげ」に感謝

宗教の世界で教えられている大切なことの一つに「感恩報謝(かんおんほうしゃ)」の心があります。恩に感じて、感謝をし、報(むく)いていくという教えです。私たち人間は、生きて、成長します。成長していくに従って、いろいろな因縁(いんねん)で私たちは成り立っている、存在していると思えてきます。

それは、道理の上で、「因縁」という言葉を使いますが、心の面でもう少し情感的に、情緒的に言えば、日本では昔から「おかげ」ということでいわれています。自分が、今生きて、成長している、そのおかげさまに感謝する尊さを教えて頂いているのです。

いろいろな「おかげ」でできた自分、「おかげ」で成り立っている自分であれば、いろいろと報いていかなければならない――そういう意味で、昔からよく「四恩(しおん)」ということがいわれています。父母の恩、衆生(しゅじょう)の恩、国王の恩、三宝(さんぼう)の恩など、いろいろな恩があります。そうした恩を感じて、そのおかげさまに報いていくということが大切だというのです。

この「恩」は、とても面白い字です。四角(「囗」)の中に「大」という字が書いてあり、その下に「心」があって、「恩」という字になっています。四角は、自分が成長してきた環境を表します。その中は「大」の字になっています。人の手足を伸ばした姿が、この「大」という字であるそうです。

ですから、今自分が置かれている環境の中で、手足を伸ばして、のびのびと生活ができる。そうした恩に報いていこう、そのおかげさまに報いていこうとするのが、「感恩報謝」にあたります。宗教の世界だけではなく、人間が生きていく上において一番大事なことは、そうした「感恩報謝」の心であると昔から教えられてきたのです。
(4月15日)