バチカンから見た世界(160) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

しかし、教皇は、「(私たち人間が)AIは、一人の人間ではないことを認知することが重要だ」と警告する。AIは代数的な計算による論理的な連鎖で作動し、この「アルゴリズム」(演算手順)と呼ばれる計算方法は、人間にとって重要である客観性、中立性を持たないのだ。

また、複雑な問題を解決するためにプログラム化されたアルゴリズムは、それを利用した人間が、どのようにしてAIが結果を得たのかを完全に理解できないほど高度なものであり、セミコンダクターやマイクロチップを使用するコンピューターではなく、量子コンピューターの実用化が急がれている。

さらに、教皇は「生成AI」について言及。生成AIは、厳密には「生成的」ではないと主張し、「新しい概念や分析を提供するものではない」と伝えた。生成AIの機能は、「ビッグデータ」の中にある情報を設定された形で提供することだからだ。繰り返される概念や仮説を見つけるたび、それらを正当化し、有効だと判断して「より魅力的な形で提供する」と説明した。

そのため、生成AIは、「生成」というよりは「強調」であり、すでに存在する内容を再編成し、その内容に誤謬(ごびゅう)が含まれているかを確認することなく、結果を確立化していくという。教皇は、生成AIが「フェイクニュースを正当化しかねず、支配的な文化の優先権を増強していく」「本質的な教育プロセスを危険に陥れる」と警鐘を鳴らした。