バチカンから見た世界(146) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)
3宗教間の融和なくして中東和平は実現できない(5)―「2国家共存」を拒否するイスラエル―
「47NEWS」は1月19日、イスラエルのネタニヤフ首相が18日の記者会見で、「バイデン米政権が求めるパレスチナ国家樹立による『2国家共存』を拒否する考えを改めて表明した。米側にも伝達したと述べた」という共同通信の記事を掲載した。さらに、「ヨルダン川西岸の全域について、将来的に『イスラエルが治安を管理する必要がある』とし、西岸のパレスチナ自治区への関与も強める意向を示した」と報じた。
また、イタリアの「ANSA通信」は19日、欧州連合(EU)の外相にあたるジョセップ・ボレル外交安全保障上級代表が、「イスラエルのネタニヤフ政権は、中東紛争解決に向けたあらゆる解決策の障害になっている。国際社会が、外部から2国家解決策を強制しなければならない」と発言したことを伝えた。
パレスチナ自治政府(PNA)のムハンマド・シュタイエ首相はこのほど、バチカン日刊紙「オッセルバトーレ・ロマーノ」のインタビューに応じた。この中で、「イスラエルのネタニヤフ首相は、この30年間、宙づりになったままの『2国家解決案』の破壊のみを望む政策を実行してきた」と非難した。
イスラーム過激派組織ハマスが実効支配してきたガザ地区の問題に関しても、「ネタニヤフ首相が、ガザ地区を政治的、経済的、制度的、地理的に孤立させ、パレスチナ問題全般から切り離し、ハマスを利用してパレスチナ自治政府の弱体化政策を実行してきた」と指摘。「アラブ諸国からハマスに対する資金援助を容認することをもいとわなかった」と話した。ハマスを強化させることで、2国家共存政策を追求するPNAの交渉能力を低下させるのが目的だという。「ネタニヤフ首相は、2国家解決策を阻止するため、パレスチナ勢力を分裂させるという、汚く、抑制のない政策を実行し、ハマスはその罠(わな)に落ちた」と分析した。
また、パレスチナ領のヨルダン川西岸地区についても言及。ネタニヤフ首相が「(1993年の)オスロ合意で指定された(イスラエルが統治する)C地区は、国際法違反とされながらも、ユダヤ人入植者たちが暴力で段階的な支配を進め、62%に及ぶ地域を占領していったもの」と指摘。同じく国際法違反である「エルサレムの占拠も、旧市街や東エルサレムの非パレスチナ化政策によって強化されていった」と述べた。