バチカンから見た世界(93) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

信教の自由、米国のカトリック教会とWCRP/RfP

米国カトリック司教会議はこのほど、6月22日から29日までの1週間を「信教の自由のための週間」と定め、信教の自由を促進するために「祈り、行動するように」と呼び掛けた。

同司教会議の「信教の自由委員会」で暫定委員長を務めるトマス・ウェンスキー大司教(マイアミ大司教区)は、「信教の自由は、人間の尊厳そのものに関わる根源的なものだ。信教の自由が他の全ての権利を保障する基であり、それが完全な形で守られる時、平和と創造的な共存が可能となる」と述べた。

ウェンスキー大司教は、世界のさまざまな国で信教の自由への抑圧が続いており、自由民主主義を掲げる西洋社会でも、「宗教全般、特にキリスト教やカトリック教会に反対する動きが、より巧妙に、暴力的ではない形で強くなってきている」と指摘した。多くの人々が宗教を紛争の原因と見なし、宗教はもっと寛大(寛容)な姿勢を持つべきと主張し、宗教を個人の領域に閉じ込め、その社会性を認めようとしないと訴えた。

バチカンの公式ウェブサイト「バチカンニュース」は同23日、米国カトリック司教会議による提案を取り上げ、世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)国際委員会のコミュニケーション・ディレクターであるマッダレーナ・マルテーゼ氏のインタビュー記事と音声を配信した。

同氏は、米国では合衆国憲法修正第1条によって信教の自由が保障されていることを説明し、その精神を実現していくためには、一例として「(テロ)攻撃を恐れることなく、安全な場所で宗教行事やミサを執り行う権利が保障されなければならない」と話した。実際、2017年にテキサス州サザーランドスプリングスのキリスト教教会で、翌18年にペンシルベニア州ピッツバーグのシナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)で銃乱射事件が起きているからだという。

また、信教の自由を守るためには、時として政権とも対峙(たいじ)しなければならないとも語っている。同氏は、トランプ政権が不法移民の流入を防ぐとの名目でメキシコとの国境に壁の建設を表明し、カトリックのブラウンズビル教区(テキサス州)に国境付近の土地の売却を求めたが、教区はそれを拒否し、政府と法廷闘争に至ったことを例示。「教会が所有する土地で、自らの信仰に沿って生き、信徒たちを指導することは、信教の自由で保障されている権利」であり、壁の建設が自らの信仰に照らして受け入れられるものではないと訴えるのは正当であると伝えた。