バチカンから見た世界(81) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)
ブルキナファソのカトリック教会は、アフリカのIS系テロ組織から攻撃を受けているが、フィリップ・ウェドラオゴ枢機卿(ワガドゥグ大司教)は6月4日、首都ワガドゥグで開かれた断食明けの祝祭日に参加した。イスラームの祝祭日の式典に同枢機卿が参加したのは、「普遍的な人間の友愛を促進していくことが教皇のメッセージであり、その友愛によって、ムスリムとキリスト教徒が無知、暴力、憎悪、誤解の壁を取り除き、友情、友愛、相互理解、寛容の橋を架けていく」ことを願ってのことだ。その上で、同枢機卿は、「ムスリムの兄弟たちが、テロ攻撃によって脅かされているわれわれの国家と生命のために祈り続けてくれる」との確信も明かしている。
このアフリカ人枢機卿の呼び掛けに呼応するように、バチカン諸宗教対話評議会議長のミゲル・アンヘル・アユソ・ギクソット司教は6月5日、イタリア・カトリック司教会議の通信社「SIR」に掲載されたインタビュー記事の中で、イド・アル・フィトルに際してキリスト教徒とイスラーム教徒が人間の友愛を促進し、「恐怖や無知によって築かれた壁を打倒することによって、全人類の善の土台である友情の橋を構築していくように」と訴えている。
インドネシア・中部ジャワ州の州都スマランでは、ロベルトゥス・ルビヤトモコ大司教が、断食明けの祝祭日にカトリック教会の使節団を率いて中央モスク(イスラーム礼拝所)を訪問し、祝辞を述べた。これを受けて、同モスクのイマーム(イスラーム指導者)であるキアイ・ブディ・ハルジョノ師が「感動し、涙を流して喜んだ」とのことだ。ローマ教皇庁外国宣教会の国際通信社「アジアニュース」が6月6日に伝えた。
同通信社は、インドネシア各地でカトリック教会による同様のイニシアチブがとられ、中にはプロテスタント教会、仏教、ヒンドゥー教の指導者や信徒たちが参加した地域もあったという。
イド・アル・フィトルの最終日だった6月6日は、第二次世界大戦において連合軍を勝利へと導いたノルマンディー上陸作戦(D-Day)の75周年記念日でもあった。フランス北西部のノルマンディーでは、トランプ米大統領やマクロン仏大統領が参加して記念式典が執り行われた。教皇フランシスコは、その記念日に向けたメッセージの中で、ナチスを「殺りくのイデオロギーに鼓舞された政権」として非難し、「あらゆるキリスト教の教会の信徒、他の諸宗教の信徒、善意の人々が、より小さく、貧しい人々に目を向けながら、出会いと対話の文化に挺身(ていしん)することによって、真に普遍的な友愛を促進していくように」と呼び掛けた。