バチカンから見た世界(78) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

平和の鳩は飛ぶために翼を必要とする――アブダビでの教皇

2月3日、歴代教皇として初めて、イスラーム発祥の地であるアラビア半島の地を踏んだローマ教皇フランシスコ。その行く先は、アラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビで行われた、「ムスリム長老評議会」が主催する「人類友愛のための国際会議」だった。この会議には、立正佼成会の庭野光祥次代会長を含む世界の諸宗教者ら700人が集った。

席上、スピーチに立った教皇は、「この半島の全ての国々に友愛と尊敬」のメッセージを発しながら、ムスリム(イスラーム教徒)とキリスト教徒が「平和の道具」(アッシジの聖フランシスコの「平和の祈り」にある言葉)となれるようにとスピーチした。

この中で、教皇は、「どうしたら、諸宗教が分断の壁ではなく、友愛のチャンネルとなることができるか?」と問い掛け、その答えとして、「われわれが(イスラームとキリスト教に共通する、まさに同じ神によって創造された)“人類家族”――人類が一つの家族として存在することを信じるなら、その結果として、同じ家族を擁護していかなければならないはずである」と主張した。人類家族の擁護は、「日常の効果的な対話」の繰り返しによってなされていくものであり、対話には「自身のアイデンティティーの確立、他者を認め、受け入れる勇気」が必要となると述べた。

さらに、「他者と、その他者の自由を完全な形で認めていく」とは、「彼らがどこにいようとも、その基本的人権は常に誰からも(尊重、)順守されるものでなければならないと主張する」ことであると強調。「なぜなら、自由なくして、私たちは人類家族の子供であることはできない。そうでなければ奴隷となってしまう」と語っている。