バチカンから見た世界(74) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

「五つ星運動」と「同盟」と呼ばれるポピュリズム勢力が政権を担当するイタリアでは、マッタレッラ大統領が12月31日、国民への年末メッセージの中で、国家が“共同体”であると強調。「それぞれが自身の理念のために闘っていく時、国民を一致させる要素を自覚し、敵対心と恐れを生み出す怨念、侮辱、不寛容を拒否するように」と訴えた。長引く不況の中でさまざまな不安を抱く国民を前にして、国内の政敵や欧州連合(EU)を激しい口調で攻撃し、国民や社会を分断させるポピュリスト政権に対する大統領からの忠告だった。

韓国大統領府は12月30日、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長から「朝鮮半島の平和と繁栄のために議論を進展させ、非核化問題も共に解決していく用意がある」(同日付の「共同通信」電子版)とする、文在寅(ムン・ジェイン)大統領に宛てた親書について明らかにした。また、金委員長は元日、新年の挨拶を行い、その中で「いつでも(トランプ)米大統領と会う準備ができている」「双方の努力で良い結果が生まれると信じる」「核兵器を新たに製造、実験、使用、拡散しない措置を取った」(1日付の「朝日新聞」電子版)などと語った。

その金委員長の発言に対してトランプ大統領は同日、「私も金氏と会うのを楽しみにしている」とツイート。メキシコ国境に沿って壁を建設する予算をめぐって民主党と対立し、米政府機関の一部が閉鎖に追い込まれている問題に関してトランプ大統領は、バチカンが巨大な壁で取り囲まれていることを挙げて自身の壁の建設政策を正当化していると、米国のメディアが報じている。

さて、ブラジルでは今年の元日、「ブラジルのトランプ」と呼ばれるジャイル・ボルソナロ新大統領の就任式が執り行われた。その就任式に先立ち、就任式に参加するために同国を訪問していたイスラエルのネタニヤフ首相と懇談したボルソナロ新大統領は、「米国と同様、ブラジルの在イスラエル大使館をテルアビブからエルサレムへ移転することを確約」した。それに対して、パレスチナ自治政府のアッバス議長は元日、「エルサレムは、パレスチナ国家の永遠の首都として残る。誰に対してもエルサレムを安売りすることを禁じ、ドナルド・トランプ大統領に対してもエルサレムをイスラエルに売ることは許されない」と激しく抗議した。ボルソナロ新大統領は、就任式の演説で「愛国(自国至上)の原則を復興し、私たちの原点であるユダヤ・キリスト教の伝統を回復する」と強調し、社会主義のイデオロギーと闘っていく極右ポピュリズム政権としての色彩を強めた。