バチカンから見た世界(63) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)
朝鮮半島の平和へWCCとバチカンが協力
世界教会協議会(WCC)創立70周年を記念したエキュメニカル(全キリスト教会の一致)な式典が6月21日、スイス・ジュネーブにある同本部で行われた。席上、スピーチに立ったローマ教皇フランシスコは、キリスト教の諸教会が「共に祈り、共に福音を伝え、共に奉仕する」ことの重要性を強調した。
世界120カ国のプロテスタント、正教、英国国教会(聖公会)を中心とする350教会の代表者がジュネーブに参集して創立70周年を共に祝うとともに、教皇の言葉に耳を傾けた。その中には、WCCアジア地域の張裳(チャン・サン)議長、韓国キリスト教教会協議会(NCCK)の李鴻政(イ・ホンジョン)総幹事、さらに北朝鮮のキリスト教指導者の姿があった。「キリスト教の諸教会が、朝鮮半島における和平プロセスの活性化の役割を担う」と信じるこの2人の韓国人キリスト教指導者は、WCCが公表したプレスリリースを通して、「朝鮮半島に平和と和解をもたらすため、WCCとバチカンの協力」を訴えた。
金大中政権下の2002年、韓国で初の女性首相代理に指名された張氏。北朝鮮で生まれた後、幼い頃に父親を亡くし、朝鮮戦争時に母親の実家のある韓国・大田(テジョン)に移り住んだ。今回、WCCが配信したプレスリリースには、ローマ教皇と笑顔で握手を交わす張氏の写真が掲載され、「韓国のキリスト教徒たちは、70年間にわたって朝鮮半島の平和と和解の実現を祈ってきたが、以前は、夢も希望もありませんでした。しかし、今は希望が私たちの目に見えるものになっている」との張氏の談話が記されている。「南北間の道路が、いくらか見えるようになり、この道を南北が共に開拓していける可能性が出てきた」というのだ。
一方、プレスリリースの中で李総幹事は、4月27日の南北首脳会談で韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が署名した「板門店宣言」を、「朝鮮半島の人々にとって共通の政治的基盤」とし、「“和平の調停役”としてバチカンとWCCが協力し、その役割を果たすことが重要」との認識を表明。「北朝鮮政府が国際社会との関係を正常化する強い意思を表しており、間もなくバチカンの関係者が北朝鮮を訪問し、北朝鮮がバチカンとの関係を正常化することになるだろう」との考えを示した。