バチカンから見た世界(58) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

“朝鮮半島の春”を祈る韓国の諸宗教者

ローマ教皇フランシスコは4月25日、水曜日恒例のバチカンでの一般謁見(えっけん)の席上、「軍事境界線のある板門店で4月27日、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長による南北首脳会談が開かれる」と語り掛け、「両首脳の出会いは、朝鮮半島と全世界に平和を保障するため対話を促し、和解と新たな友愛に向けた具体的な歩みを始める良い機会になるだろう」と述べた。

さらに、教皇は、韓国と北朝鮮の二つの国の国民という意ではなく、単数表現による「朝鮮半島の国民」という言葉を使いながら、「和平を熱望する朝鮮半島の国民に対して、私自身の祈りと、全世界のカトリック教会の連帯」を約束するとともに、「聖座(バチカン)は、諸国民間の出会いと友愛によって、よりよき未来を構築する、あらゆる取り組みに関わり、支援し、奨励する」との考えを示した。また、直接的な責任を担う政治指導者に対して、全人類の善となる道程を信頼し歩むようにと奨励し、“平和の職人”となって平和実現への勇気を持つようにと促した。

一方、韓国宗教人平和会議(KCRP)も南北首脳会談を前に、「2018年の冬季オリンピック以来、朝鮮半島の和平に向けて明るい兆候が見えているが、この兆候が春の花として開花するように願う」との声明文を発表した。このKCRPを構成する7宗教団体の指導者たちによって署名された声明文は、同国カトリック司教会議議長の金善中大司教によってイタリア・カトリック司教会議の「SIR」通信社にも寄せられ、同24日に配信された。

声明文でKCRPの宗教指導者たちは、「4月27日に迫った南北首脳会談と、5月に予定されている米朝首脳会談が、人類史において重要な分水嶺(れい)として記憶されるように」と期待を寄せ、「かつて大国の戦いの場と化した朝鮮半島が、平和と対話の地に変貌するように」と祈念する。また、38度線を「東西冷戦の最後の壁」と呼び、対話と相互理解によって育まれた人間的な温かさが冷戦の壁をもとかすと強調。こうした時に、「世界の全ての人々が共生するために、あらゆる努力を尽くすようにとのインスピレーションを受ける」との思いを表した。