バチカンから見た世界(55) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

イタリアの「同盟」、フランスの「国民戦線」、米国のトランプ政権と自国至上主義

「生活困窮者に対する生活保障金(市民所得)の給付」「不法移民の大量追放」「反欧州連合(EU)」という三つの公約を掲げて選挙戦を展開し、3月4日のイタリア総選挙で圧勝した「五つ星運動」と「同盟」。4月6日現在、マッタレッラ大統領を調停役とし、各政党による組閣交渉が大統領府で行われているが、「五つ星」と「同盟」の協力による連立内閣誕生の可能性が強くなってきた。

状況はいまだ流動的だ。だが、EUの創設メンバー6カ国の一つであるイタリアで、ポピュリズム政権の誕生が現実味を帯びてきていることは確かで、それはEU指導者たちの最も恐れていることでもある。フランスのマクロン大統領とドイツのメルケル首相は3月16日、欧州統合プロセスの改革について協議するためにパリで会談し、次のような声明を発表した。「英国のEU離脱とイタリアの総選挙の結果によって深く揺り動かされた状況の中で、私たち(EU)が対処しなければならない課題の重要性が増している。この二つの出来事の中で、過激な立場を表明する勢力が強くなり、私たちが対処し得なかった、長い経済危機と移民問題の解決に挑まなければならないことを実感させられている」。

イタリア総選挙において、急伸したポピュリズム勢力の中で、最も過激な立場を表明し、EU指導者たちを憂慮させているのは「同盟」だ。だが、3月30日付のイタリア日刊紙「ラ・スタンパ」は、「われわれは、新しい二極(五つ星と同盟)、特に、台頭してくる極右派の自国至上主義者たち(同盟)の政治姿勢、関心、イデオロギーについて、ほとんど知らない」との警告を発している。同紙は、「同盟」の前身であるウンベルト・ボッシ氏を党首とする「北部同盟」が、同国北部の自治権の拡大や連邦制への移行を主張したのに対して、2013年にマテオ・サルヴィーニ氏が党首となり、今年、名称から「北部」を外した「同盟」は愛国主義や自国至上主義を旗印とし、文化的な変貌を遂げたと分析する。