バチカンから見た世界(49) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

聖都エルサレムをめぐる問題――イスラーム政治指導者とバチカン

トランプ米大統領が昨年の12月6日、聖都エルサレムをイスラエルの首都と認定し、米大使館を移転させる宣言文書に署名したことに対し、エジプト・カイロのイスラーム・スンニ派最高権威機関「アズハル」のアハメド・タイエブ総長は、「エルサレムに大使館を移転させるという米国の実行を阻止しなければならない」と発言し、12月中旬にカイロで予定されていたマイク・ペンス米副大統領との会見を拒否した。今年に入り、アズハルは1月16、17の両日、同機関で「エルサレム支援のための国際会議」を開催した。86カ国から政治家やイスラーム、キリスト教の指導者が参加した。

主な政治指導者として、パレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長、アラブ連盟の立法府であるアラブ議会のメシャール・アルサルミ議長、同連盟のアフマド・アブルゲイト事務局長、クウェート議会のマルズク・アルガニム議長、レバノンのアミン・ジェマイエル元大統領やファード・シニオラ元首相の政治指導者が出席した。一方、キリスト宗教指導者として、エジプトのコプト正教会のアレクサンドリア教皇タワドロス二世、レバノン・マロン派カトリック教会のベカラ・ライ枢機卿、世界教会協議会(WCC)のオラフ・フィクセ・トゥヴェイト総幹事が参加。トランプ政権によるエルサレムの首都認定後の状況にいかに対処するかを話し合い、統一した見解をまとめる国際会議になった。

ローマ教皇フランシスコは招待を受けていたが、チリとペルーへの訪問の時期と重なり、秘書のヨアンニス・ガイド神父と駐エジプト教皇大使のブルーノ・ムサロ大司教を派遣し、タイエブ総長に宛てた親書を託した。会議の席上、ガイド神父がアラブ語で記された教皇のメッセージを読み上げ、「イスラエル・パレスチナ間で合意され、国際的にも認可された2国家の平和共存」と、「国際的に保障された特別区としてのエルサレムの地位」を訴えた。