バチカンから見た世界(45) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

一方、トランプ政権にとって主要なパートナーであるサウジアラビアも、「深い憂慮」を表明。同様の憂慮を有するフランスのマクロン大統領は、「エルサレムの法的な位置付けの問題は、イスラエル人とパレスチナ人との交渉によって解決されるべきだ」と語り、国際社会で合意している取り決めの順守を促した。欧州連合(EU)のフェデリカ・モゲリーニ外務・安全保障政策上級代表は公式見解を発表し、(イスラエルとパレスチナの)2国家原則の実現に向けて意義のある和平交渉の再開をEUは支持しているとして、「この努力を危険に陥れる、あらゆる行動を避けなければならない」と主張。「エルサレムの位置付けに関する問題は、交渉によって解決する道が開拓されていかなければならない」と語った。

教皇フランシスコは、アッバス議長と電話会談した6日、バチカン広場での一般謁見(えっけん)の席上、「ここ数日間に起きたことを深く憂慮しており、黙ってはいられない」と切り出し、エルサレム問題に言及。「エルサレムの現状の位置づけが、皆の努力によって維持されるように」と語り掛けた。また、「エルサレムは、ユダヤ教徒、キリスト教徒、イスラーム教徒にとって唯一の共通の聖なる地である。それぞれの宗教の聖域をその内に抱え、平和に対する特別な使命を背負う」と強調。残忍な紛争が頻発している世界情勢にこれ以上、「新しい緊張の要素を付加しないように」と訴えた。バチカンは、エルサレムの位置づけについて、「国連決議に沿い、3宗教共通の聖都であるエルサレムを国連の管理下に置く」という立場を捨てていない。