一般社団法人「人を大切にする経営学会」の坂本光司名誉会長が仏教経営者塾「六花の会」で講演――人を幸せにする企業経営とは

「六花の会 仏教経営者塾講演会2026 」で講演に立つ坂本光司氏

ホルムズ海峡封鎖の影響で原材料費は高騰、資材不足が露呈するなど、とりわけ中小企業を取り巻く環境は厳しさを増している。こうした状況の中、仏教経営者塾「六花の会」主催の講演会が今夏に開かれ、本会会員の経営者ら約220人が参加。『危機にある時に経営者が大切にすること』を主題に、一般社団法人・人を大切にする経営学会名誉会長(元法政大学大学院政策創造研究科教授)で経営学者の坂本光司氏が講演した。主な内容を紹介する。(文責在編集部)

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企業とは何でしょうか。経営学の教科書には「株主価値の最大化が目標」などと書かれてありますが、それ以上に経営の目的は、企業に関係する人々の幸せを追求し、実現することにあると私は考えています。もちろん企業の存続・発展に利益は不可欠ですが、それは人々の幸せを実現するための「手段」であって「目的」そのものではありません。人件費を単なるコストと捉えない、人は利益を生み出すための手段ではないという、人を大切にした経営が危機を乗り越える力になり得ると思います。

かつて日本中を行商に歩いた近江商人に「三方〈売り手・買い手・世間〉良し」の理念がありましたが、現代の企業経営では、

①社員とその家族
②取引先や協力会社で働く社外社員とその家族
③現在顧客と未来顧客
④地域住民、特に障がい者や高齢者などの社会的弱者
⑤株主・支援機関など

新たに「五方良し」の実践が求められるようになってきました。

中でも重視すべきは「社員とその家族」。人材不足が深刻化した昨今、経営者には、企業を存続・成長させることと同時に、従業員の〝幸せづくり〟が大事な仕事と言えるでしょう。会社に不平不満、不信感を抱く社員が、必要以上のサービスや価値を顧客に提供しようと努力するとはあまり思えません。社員は職場環境に満足感や幸福感を得ることで、生き生きと輝き、やりがいを持って仕事に取り組むようになります。その結果、高いモチベーションを維持し、一人ひとりのパフォーマンスが向上し、最終的には業績向上につながっていくのです。

熱のこもった坂本氏の話にメモを取りながら耳を傾ける経営者たち

社員のモチベーションを上げるためにはできる範囲で労働環境を整えることが大切です。私が20年以上かけて国内約8500社・海外約500社を実地調査した経験に照らすと、「社員のモチベーションが高い企業で業績が低い会社」は存在しませんでした。

経営危機に陥ると、急きょ成果主義を導入する企業が少なくありませんが、そこは慎重に考えて頂きたいと思います。会社組織には、目立つ部署もあれば縁の下の力持ちのような部署もあります。誰が欠けても成り立ちません。業績が傾いてきたからといって、突然社員を競争させるようなことは、かえって職場のチームワークに影響を与えかねないと考えます。

そこで、人材開発・教育にできるだけ力を入れてほしいと思います。社員が自身の才能を開花させて成長した分だけ、企業は成長します。大切に育ててくれる経営者に社員は報いたいと思い、「会社のために自発的に貢献しよう」「この会社で働いてよかった」とモチベーションを高めていきます。社員同士で刺激を与え合い切磋琢磨(せっさたくま)する関係を築いていく相乗効果も表れるでしょう。

企業には、社会的公器としての側面もあります。地域社会と共に生きるには、障がいのある人の就労機会の創出なども重要で、社会貢献は企業活動の一つです。

日々の経営活動には数字や効率だけでは判断できないことが多く、経営者には苦労が絶えないと思います。迷った時は、「この判断は、人として正しいだろうか」「誰かの犠牲の上に成り立ってはいないか」と自らに問いかけて、「損得ではなく善悪」「自利ではなく利他」を尺度に意思決定を行っていくことも一つの指針です。それが“お天道様に顔向けのできる正しい経営”ではないかと私は思います。ピンチの時こそ、いつも以上に社員と心を通い合わせて困難を乗り越えられることを願っています。

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