完成した「イエス・キリストの塔」を説明したレオ14世/「サグラダ・ファミリア教会」で(海外通信・バチカン支局)

ローマ教皇レオ14世はスペイン訪問中の6月9日、マドリードからバルセロナへと向かった。マドリード市内では、スペイン全土から参集したカトリック信徒のボランティアたちの集会に臨み、「キリスト教徒は、世界に“無償の酵母”をもたらすように呼びかけられている」と励ました。「無償の奉仕は、社会において、人間、倫理、霊的な質を高める酵母の役割を果たし」、聖アウグスティヌスの説く「『神の国』を代表する行為である」と教示。利害や利益の論理から間断なく影響を受け、“発展”が経済・金融的な側面に限定されてしまっている現代世界にあって、「真の論理、即(すなわ)ち、人間の全体的な発展に沿って考え、生きていくことが必要となる」とアピールした。「キリストは、世界に神の王国の酵母を蒔(ま)くために人となられた」とも諭した。

サグラダ・ファミリア聖堂の最も高い塔、「イエス・キリストの塔」の完成を祝うミサ

バルセロナに移動した教皇は10日、世界遺産に登録された、同国の著名な建築家であるアントニ・ガウディ氏の代表作、「サグラダ・ファミリア教会」に赴き、完成したばかりの高さ172・5メートルの主塔、「イエス・キリストの塔」の竣工(しゅんこう)記念ミサを執り行った。同教会内には9000人の信徒が参集し、教会周辺に設置された巨大スクリーンを通して、約12万人の市民が式典を見守った。同日は、ガウディ氏没後100年の記念日でもあった。140年以上も建築の続くスペイン宗教芸術の一大傑作は、三つ目のファサード(正面装飾)となる「栄光のファサード」の工事を残しており、全体が完成するまでには、まだ10年かかると推測されている。

教皇は、ミサ中の説教で、同聖堂が「多くの石で構成される唯一の教会」であり、「年月の経過の中で、同一の建築プロジェクトに沿って、常に大きくなっていく家」と表現。「われわれが、この建造物を構成する生きた石」であり、「キリストが土台、到着点、そして始め、終わりである」と位置付けた。また、「聖家族(サグラダ・ファミリア)教会」がいまだ“工事現場”であると指摘し、それは「キリスト教徒の生活が、神の実現されるプロジェクトに向けた常なる歩みであることを象徴している」と説いた。「未完の教会は欠陥ではない」と強調。建築努力が「われわれの願望、約束、一貫性」の表明であるからだと、その理由を述べた。そして、「教会(建築)においては、私たちが神に席を与えるのではなく、部外者、罪人であった私たちに神が席を与えてくださるのだ」と戒めた。

教皇はサグラダ・ファミリアのクリプタ(地下聖堂)にあるアントニ・ガウディの墓前で祈りを捧げられた

教皇は、同教会の頂点に設置された主塔、「イエス・キリストの塔」に言及。十字架が意味するのは「(地上の国で)末席にあった者(貧者や虐げられている人々)が(神の国では)筆頭席に座り、罪人が聖人となり、死者が復活する」ことであると述べた。さらに、同教会を飾る三つのファサードについて説明。最初のキリスト「生誕のファサード」が、「筆頭である神が私たちの救いのために人となり、末席に座られた」ことを意味すると解釈した。第2の「受難のファサード」は、「キリストの十字架上の死によって、われわれが救われた」ことを告げており、第3の「栄光のファサード」は、「キリストの死によって永遠の生命を与えられたわれわれが、神の栄光に与(あずか)ることができる」事実を示しているのだという。従って、「キリストの主塔」を仰ぐことは、「キリスト、それも、神とわれわれに関する真理を啓示されたキリストを仰ぐ」ことになると説明。「信仰が石に形を与え、私たちが共に住む、教会建築に意味を見いださせる」とも説いた。

最後に、建築家のガウディ氏(カトリック教会の尊者と認定されている)に言及した教皇は、彼が「主なる神にまつわる神秘を語るために、この教会の建築を思い立った」と述べ、その努力を称賛した。また教皇は、ガウディ氏が「サグラダ・ファミリア教会」の建築を通し、「私たちのために生まれ、死し、復活したキリストとの出会いを促進する、霊的巡礼へと誘(いざな)っている」と語った。ガウディ氏没後100年に思いを致し、「建築界における一大傑作の建立に貢献した、促進者、財的後援者、芸術家、工事担当者たち」に感謝を表した。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)