【「桃山商事」代表・清田隆之さん】変わりゆく社会と中高年男性たちの葛藤

現代を生きる中高年世代の男性の中には、知らず識(し)らずのうちに、社会の中で窮屈さや孤独を感じる人が多いという。「その背景には、男性中心である社会構造が影響している」――恋愛相談やエッセイ執筆を通して「男性性」や「生きづらさ」の問題を考察してきた、文筆家の清田隆之さんはそう語る。「男らしさ」の背景をひも解いた時に顕在化するもの、男性が生きやすくなるためのヒントを清田さんに聞いた。
「男らしさ」の正体
――多くの恋愛相談を受ける過程で見えてきた、社会の中での「男性」とは
大学時代、クラスの8割が女性という環境で、女性の友達から恋愛や失恋の話を聞く機会が多くあり、それが文筆家となる原点になっています。女性たちから恋愛に関する悩みを聞くうち、性別を扱うジェンダー学に興味を持ち始め、そこで「男性性」という言葉を知りました。
男性性とは、私の理解では「透明化されているもの」です。男性が抱える問題の根本には社会規範としての「男らしさ」が大きく関わっていると考えますが、それが他の要因に溶け込み、一見すると女性の問題や課題として扱われ、見えにくくなっていると感じます。
例えば、家父長制は戦後の民法改正で廃止されましたが、現代でも社会規範、常識や風潮という形で社会のあらゆるところにいまだ残っています。そうした価値観によって男性と女性の役割が偏り、男性特権が社会に温存され、女性側に改善を求めるような意識が生まれやすくなっているのではないか。
また、男性の多い職場に女性が一人いる場合、「子どもがいるのにフルタイムで働けるのか」「女性はメンタルに左右されやすい」など、何かと〝女性側の問題〟として語られがちですが、そもそも「なぜこの職場は男性ばかりなのか」「なぜ長時間労働を前提にできているのか」という点には目が向きにくいですよね。男性が働くのは当たり前という価値観の中で役割が偏っていることが分かりますが、それに男性側は気づかない。このように、男性たちはジェンダーを意識せずとも生きられる一方、問題の論点が女性側に移ってしまうことになります。
――男性が感じる生きづらさにはどんなことがありますか
生きづらさは性別に関係なく個々人の問題として存在していると思いますが、男女という大きなくくりで見ると、賃金格差や男性中心社会での不利な仕組み、性被害のリスク、ライフコースの選択など、女性の方が生きづらさを感じやすい構造がありますよね。しかし、複雑な課題であるが故に、女性は多種多様な対処法のネットワークを発達させてきたとも言え、日常的に声をかけ合ったり、お茶をしたりするなどして、互いにケアし合うようなつながりを構築しやすいのではないでしょうか。
一方で男性は、会社組織が男性を強く縛ってきた側面があると考えています。人間関係も仕事中心になりがちで、趣味や友人関係は次第に細っていき、愚痴をこぼしたり、弱みを見せたりできる関係性を築きづらく、孤立化しやすい。そして、心身共に健康な男性を前提とした社会の仕組みの中で、期待される男性像に適応できない人にとっては逃げ場のない構造になっている。一度心身を壊して社会から外れてしまうと立て直す手段が乏しいとも言えます。問題を社会構造ではなく個人の「努力不足」と捉え、自己責任論で片づけやすい点も影響しているでしょう。
また、「男らしさ」に縛られていることに無自覚な男性は多く、取材を通して不安や悩みを掘り下げていくと、背景にジェンダー規範があることが見えてきます。実は、ジェンダー規範をめぐるハラスメントは男性間で生じている場合が多いかもしれない。例えば、勝った人がおごるというルールの「男気じゃんけん」などに見られるノリ重視と我慢比べの空気、あるいは男性の方が多く支払う飲み会の慣習、薄毛などの容姿に対して「そんなんじゃ女にモテないぞ」とからかうなど、男性同士で圧力をかけあって「男はこうあるべきだ」という規範を強化しています。





