【サイエンスカフェ広場「りっかRIKA」代表・島田誠さん】「ワクワク」が学びの入り口 科学の魅力を伝えて

国際色豊かな歓楽街として栄えたコザ十字路銀天街(沖縄市)。その一角に、サイエンスカフェ広場「りっかRIKA」がある。8坪の空間には鉱石や化石の標本、天体望遠鏡が並び、秘密基地のような雰囲気に心躍る。代表の島田誠さんは、ここで理科教室を開き、子どもたちに科学の魅力を伝え続ける。活動に込めた思いを聞いた。

故郷沖縄で、理科しよう

――「りっかRIKA」ではどのような活動を?

月一回程度、小・中学生を対象に理科教室を開催しています。講師は第一線で活躍する研究者で、宇宙、生物、ロボットなど多岐にわたる分野を扱っています。教室名には、「○○しよう!」(Let’s)を表す沖縄の方言「りっか」を入れて、「RIKA(理科)しよう!」という意味があります。故郷沖縄で、子どもたちに科学の面白さを伝えたいと願って名付けました。

地元に親しむことも大事にしていて、沖縄の豊かな自然に生息する昆虫や魚の生態系について考えたり、台風と共に暮らす土地柄から、気圧や気温を宇宙から観測する技術の研究者と気象予報士とのトークセッションを行ったりしたこともあります。体験的なプログラムでは、ロボットの工作、液体窒素を使って身の回りの物を凍らせる、静電気を蓄える装置「ライデン瓶」を紙コップで作って電気を体感するといった実験も行っています。

――活動で大切にしていることは?

ワクワクするような体験を提供したいと思っています。理科教室では、化石や鉱物の発掘体験も行っているのですが、掘って終わりではなく、じっくりと観察する時間も大切にしてもらっています。観察で使うのは、学校ではあまり用いられない、両目でレンズをのぞく双眼顕微鏡。対象を立体的に観察できるので、鉱物に差す光の反射や、独特な造形を直接見ることができます。古代サメの鋭い歯を見て青ざめたり、アメジストや水晶のキラキラとした輝きに目を奪われたりする子どもたちの素直な反応を見ると、彼らの感性に訴えられたような気がして、やりがいを感じます。

私自身、27歳まで大学院で研究を続け、その後、科学関連の出版社に勤めた後、サイエンスカフェ広場を開きました。研究者という志は道半ばでしたが、今も「科学が好き」という気持ちは変わりません。その原点は中学生の頃の経験にあります。

英国のスティーブン・ホーキング博士(理論物理学者)の著作『ホーキングの最新宇宙論』を同級生に借りて読んだ私は、無限の彼方(かなた)に広がる宇宙空間を想像し、その壮大さに圧倒されました。両親に無理を言って天体望遠鏡を買ってもらい、毎晩のように自宅の屋根で天体観測。初めて火星を見た時は、≪本当に赤いんだ≫と胸を弾ませました。本を読んだら、実物を見たくなる。実物を見たら、もっと知りたくて次の本を読む。その繰り返しの中で、いつしか学ぶことが楽しくなっていました。「りっかRIKA」では、本物の研究者の話を聞く、実験で本物に触れるという体験を通じて、子どもたちが「楽しい」「面白い」と感じるポイントを刺激したいと思っています。

――これまでに印象的だった出来事は?

教室に通ってくれている小学4年生の女の子から、自宅の庭でゾウムシを見つけたと連絡がありました。数日後、虫かごを大事に抱えてやってきた彼女は、図書館で借りた図鑑を広げ、「これだと思う」と指差して、結論に至った理由を丁寧に説明してくれたのです。体の大きさ、羽の色、脚の形などを観察し、図鑑と見比べては何度も考えて、自分なりの答えを導き出したのでしょう。彼女なりに探求する健気(けなげ)な姿に胸を打たれました。

今は、スマホの撮影データを検索エンジンにかければ、瞬時に答えが出ます。でも彼女は、自分の目で観察し、自分の頭で考えました。世の中には無数の問いがあり、その大半には、「絶対の答えはない」と私は考えます。人はなぜ生きるのか、幸せとは? といった哲学的な問いはもちろん、科学分野でも、今は皆が信じて疑わない定説が将来、研究が進むことで覆る可能性さえあります。人が導いた答えをうのみにせず、自分で考える。その一方で、自分自身を疑う謙虚さも忘れない――そうした彼女の姿勢に、研究者の本質を見た気がしました。そして同時に、情報があふれる現代社会に必要なスキルであると痛感しました。

――勉強というと、苦手意識を持つ人も少なくありません

いきなり「学ぼう」「勉強しよう」と言われたら、身構えてしまいますよね。理科教室に参加する子どもたちに付き添う親御さんからも「勉強はどうも苦手で」という声がよく聞かれます。しかし、日常生活の出来事を「科学」で説明できるとしたら、少し興味が湧きませんか? 大人も一緒に実験に参加してもらうと、子どもと同じように、「面白い!」と楽しんでもらえることが少なくありません。大人も子どもも、まずは楽しむことが大事だと思います。次に興味・関心が芽生えて、もっと知りたいと感じたらもう、好きになっている。それは、学びの入り口と言っても良いでしょう。私の役割は、「学ぶ」につながるきっかけをつくる役割だと思います。

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